西武黄金期を形成…名将が呈した“苦言” 「伝えたいけれど…」感じる時の流れ

始球式に登場した西武元監督・森祇晶氏【写真:小林靖】
始球式に登場した西武元監督・森祇晶氏【写真:小林靖】

森祇晶氏が石毛宏典氏、辻発彦氏、鹿取義隆氏とともに始球式

■西武 2ー1 ソフトバンク(18日・ベルーナドーム)

 西武監督として在任9年でリーグ優勝8回、日本一6回の輝かしい実績を誇った森祇晶氏が18日、本拠地ベルーナドームでの西武-ソフトバンク戦前に「ライオンズ75周年」を記念するセレモニアルピッチ(始球式)に登板。その後の会見で現役選手へ“苦言”を呈する一幕もあった。

 88歳の森氏だが、足取りは軽やかだった。かつて中心選手として西武黄金期を支えた石毛宏典氏、辻発彦氏、鹿取義隆氏とともにマウンド前方に並び、4人同時に投球。森氏が投じたボールはツーバウンドし、捕手役の西口文也監督のミットに収まった。

 森氏の在任時(1986年~1994年)、本拠地球場はまだ屋根が設置されておらず、「西武ライオンズ球場」という名称の屋外球場だった。森氏は「球場の様変わりが凄いね。屋根もそうだし、スタンドも至れり尽くせり」と感慨深げに語りつつ、「(チームは)それにふさわしいゲームをしなきゃダメだよね。ホントに。お願いしますよ。やっぱり(西武の)成績は気になるよ。あまりにもちょっとね……。よくなってくれればいいと思いますけれど」と語った。

 森氏の退任後、本拠地球場には屋根の他にも、スタンドにカフェテリア、VIP席などが設置された。しかし昨年は最下位に沈むなど、近年は低迷気味。黄金期を築いた名将としては、苦言を呈さずにはいられなかったようだ。

移り変わる時代…「今のチームにも伝えたいけれど、環境が違うわな」

 また、森氏は会見で隣に立った石毛氏、辻氏、鹿取氏を指差し、こう語った。「今の西武にも、こういうベテランがいるといい。当時は“うるさ型”のベテランが若手に言ってくれました。技術ではなく、躾。きちんと彼らがやってくれたので、監督の私はどうのこうの言う必要がなく、楽だったし助かりました。野手は石毛、辻、投手陣は鹿取が仕切ってくれました。若い選手にとってはやかましたかったと思うけれども、きちんとしたことをやってくれました」。当時、石毛氏と辻氏は内野のリーダー、リリーバーだった鹿取氏は主にブルペンをまとめていた。

 これに対し、3氏は「きょうはやたら褒めてもらえる。現役時代にこんなことはなかった」と苦笑。辻氏が「実際、(若手に)嫌われましたよ、僕ら」とボヤいて見せると、森氏は「はっきり言って、古い選手が若者に好かれようとするチームは弱いよ。そういうものだよ」と強調した。

 森氏が指揮を執ったのは1986(昭和61)年から1994(平成6)年まで。令和の現代は若者の気質、社会全体の雰囲気など多くのことが異なっている。当時のやり方をそのまま持ち込むことは難しいだろうが、黄金期の指揮官の言葉には耳を傾ける価値がありそうだ。森氏は「当時の思い出はいろいろある。今のチームにも伝えていきたいけれど、環境が違うわな……」と苦笑した。

 森氏は西武監督退任後、2001年から2年間、横浜(現DeNA)の監督を務め、2003年からは長くハワイに移住していた。2022年に帰国し、現在は福岡県内に住んでいるという。「90歳近くなって、まさかこういう場に呼んでもらえるとは思わなかった。夢のようです」。会見の締めくくりには、穏やかな笑顔を浮かべた。

(Full-Count編集部)

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