NPB61年ぶり5度目の“珍事”はなぜ起きた? 「一番頭になかった」山川穂高の内野ゴロ

四球で出した走者が内野ゴロで生還…8回を無安打3四球1失点
■西武 2ー1 ソフトバンク(18日・ベルーナドーム)
61年ぶりの“珍事”はなぜ起きたのか──。西武は18日、ソフトバンク戦(ベルーナドーム)に2-1で勝利。先発の今井達也投手は、7回に四球で出塁を許した走者を内野ゴロの間に返され1点を失ったものの、8回を無安打3四球に抑えた。9回もクローザーの平良海馬投手が3者凡退で締め、1964年に近鉄が達成して以来、NPB5度目の「無安打有失点」試合となった。
この日の今井は最速158キロを計測した速球のスピードが最後まで衰えず、140キロを超えるスライダーの切れも抜群でソフトバンク打線に安打を許さなかった。西口文也監督が「ひょっとしたら(ノーヒットノーランを達成するのではないか)と、5回を終わったくらいに思いました」と予感したのも無理はない。
まさかの失点は1-0とリードして迎えた7回だった。1死三塁のピンチに、一昨年までチームメートだった4番・山川穂高内野手を迎えた。初球、2球目に155キロのストレートを連発しカウント1-1。3球目にはスライダーを狙われたが、タイミングが一瞬早く、左翼方向への大ファウルとなった。決着は7球目。山川が外角低めの144キロのスライダーを叩きつけると、高いバウンドの三ゴロとなり、三塁走者が同点のホームを踏んだ。
今井は「(内野ゴロという結果は)一番頭になかった。四球になるか、三振になるかだと思っていたので」と明かす。「とにかく一発が出て逆転とならなければいい。それ以外はしかたがないと割り切って投げていました」と振り返った。
西口監督「勝ちをつけないといけない試合だった」
四球覚悟でギリギリのコースを狙って投げたスライダーを、山川は内野ゴロにした。今井は「(山川が)1点を取るのに必死になっている姿が伝わってきました。4番打者でも何とか、どんな形でも三塁走者を返すという強いチームの姿勢を見ることができました」と感嘆した。
ソフトバンクは故障者続出の今季こそ、今のところ最下位に沈んでいるが、昨季は2位に13.5ゲームの大差をつけて独走V。近年最も安定した成績を残しているチームだ。一方、西武は昨季球団ワースト記録の91敗を喫して最下位に終わるなど低迷中で、特に得点力不足が顕著。今井は山川の姿勢から、西武時代と少し違うものを感じたのかもしれない。
NPB史上、相手を無安打に抑えながら四球、失策、盗塁、犠打、進塁打などで得点を許したケースは5例目。通算90人が計102度達成しているノーヒットノーラン(完全試合を含む)よりずっとレアとも言える。今井は「あまり内容は気にしていません。チームが勝つことだけを考えています。ノーヒットにこだわっていたら、たぶん9回も投げさせてもらっていたと思いますが、そんなに執着していなかったので」と語り、8回117球無安打1失点で平良へバトンを渡した。
同点に追いつかれたチームは、8回1死二塁で西川愛也外野手が右翼線へ決勝二塁打を放ち、今井に今季2勝目(1敗)が記録された。西口監督は「いつもながら、今井が投げる時は援護できない。そんな中で気持ちが入った投球をしてくれた」と称賛し、「きょうは投球内容からして、なんとか勝ちをつけないといけない試合だった」と胸をなでおろした。
2年連続開幕投手を務めた今井が先発する試合は、相手もエースという巡り合わせになることが多い。そんな中で「内容は気にしていない」と言いつつ、リーグトップの防御率0.84をマークしている。日本を代表する投手として、凄みを増している。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)




