チャンスを逃さない、ドラ4山中の思考力…痛感した1軍のレベル「1回で仕留め切る」

オリックス・山中稜真【写真:北野正樹】
オリックス・山中稜真【写真:北野正樹】

オリックスのドラフト4位・山中、打撃練習で「自分に制限」

 オリックスのドラフト4位の新人、山中稜真捕手が球団初の「新人先頭打者本塁打」を放つなど、1位の麦谷祐介外野手とともにチームに勢いをもたらしている。少ないチャンスを確実に生かす、思考力とは。

「自分が打てる球を打っているだけかな、というのはすごく思いますね。チームに同行していて試合に出られないというのはすごく歯がゆさもあったのですが、チームが勝っていますから、しょうがないやん、という思いでいました」。山中が新人らしく、屈託のない笑顔で振り返った。

 広角に強い打球を打ち分けるシュアな打撃で春季キャンプから注目を集め、麦谷とともに目標としてきた開幕1軍をつかんだ。しかし、チームは好調で外野の定位置争いも熾烈を極め、起用されたのは開幕7戦目の4月5日の日本ハム戦(エスコンフィールド)までずれ込んだ。「7番・左翼」で先発起用されたが、試合で打席に立つのは、3月22日のオープン戦以来14日ぶり。それでも、2打席目に二塁打でプロ初安打を放つと、3打席目にはプロ初打点もマークした。

「1回のチャンスを、確実につかまなくてはいけないと思います」と話していたのは、オープン戦終盤のことだった。1軍に合流して知ったのは、「投手の甘い球は少ない」ということだった。「2軍では制球の悪い投手もいましたが、上(1軍)ではレベルが高く、そう何度もチャンスがあるわけじゃありません。その1回のチャンスで仕留め切らなくてはいけないと痛感しました」という。

 数少ないチャンスを生かすために、打撃練習で自分に課していることがある。「自分に制限をかけるんです。ただ気持ちよく打つだけじゃなく、センター返しを徹底したり、マシンに近づいて速い球に目を慣らしてコンタクトしてみるんです。ずっと試合に出ていなくて、いきなりの打席だったんで不安もあったんですが、対応することができました」。そんな工夫が、実戦間隔が開いても結果を出すことにつながっているというわけだ。

「相手バッテリーが探っている間に打っちゃうみたいな感じ」

 その後も、4試合ぶりの出場となった4月11日の楽天戦(楽天モバイル)の2打席目に三塁打、3試合ぶりの西武戦(4月16日、京セラドーム)でも1打席目に安打。4月17日には球団史上初となる新人の先頭打者本塁打も記録した。

 実戦経験の少なさも味方にしている。「試合に出ていない分、相手バッテリーは崩してくるというより、探ってくるというような配球が多いと思います。だから、その探っている間に打っちゃうみたいな感じです」

 もちろん、順風満帆にいかないのは百も承知している。「絶対、壁には当たると思います。だから今は、ヒットを欲しがるのではなく、しっかりとバットを振って捉えるということを意識しています。まずは自分のスイングをちゃんとすることが大切。自分の技術を上げていきながら、しっかりと結果を出してチャンスをもらう。その順番だけはごちゃごちゃにならないように整理しなければといけないと思います」。社会人出身らしく、地に足をつけて前を見据えている。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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