「カッコつけて投げる年齢やないやろ」 齋藤響介が胸に刻む…岸田監督からの“金言”

コーチ時代の岸田監督が齋藤響介に授けた助言
忘れてはいけない言葉を胸に刻む。オリックスの3年目、齋藤響介投手が投手コーチ時代の岸田護監督からの「まだ、カッコつけて投げる年齢やないやろ」とのアドバイスをマウンドで生かす。「勝手に甘いところにいくと打たれると思って、うまく隅っこを狙ってというベテランのような投球をしていた時に言っていただきました。もっと攻めろという意味だったと思います」。20歳右腕が1年前の出来事を昨日のことのように振り返った。
2024年3月17日のヤクルト戦(神宮)。6回に2番手で登板し、村上宗隆内野手に2ラン、7回には西川遥輝外野手にも2ランを浴びて1回1/3を47球、4失点で降板した。ボールが浮いて3四球と制球に苦しんだオープン戦初登板。「前の試合で結果は良くなかったのですが、真っすぐも強く投げることができていました。初めてのオープン戦だったので抑えるつもりでした」と臨んだマウンドで好結果を残せず、ベンチであふれる涙をこらえることができなかった。
盛岡中央高(岩手)から2022年ドラフト3位で入団。2023年9月26日の西武戦(京セラドーム)でプロ初登板に臨み、先発して4回2安打無失点と上々のデビューを飾った。山本由伸投手(ドジャース)が「ネクストブレーク選手」として挙げた逸材で、愛くるしい笑顔と穏やかな口調から「響ちゃん」と呼ばれる一方、マウンドでは150キロのストレートを武器に打者をにらみつける“ギャップ”もファンを魅了する。
「1年目は結構アグレッシブというか、打者と勝負するという感じだったのですが、隅っこを狙ってフォアボールになったりしてしまいました。コントロールを意識していた分、球威もなくなっていました」。その試合で2軍落ちを告げられた齋藤に、当時2軍担当の投手コーチだった岸田監督は腕を振ることの大切さ、攻める気持ちを植え付けた。
失意の涙から約2か月半後、プロ5戦目となった6月8日の巨人戦(東京ドーム)で初勝利を挙げた。しかし、安定した投球は続かず、昨季は8試合に登板して2勝3敗。今季もオープン戦登板2試合で防御率47.25(1回/3自責7)と打ち込まれ、開幕1軍を逃した。
「岸田監督のアドバイスはいつも思い出すのですが、マウンドに立つと打たれたくないという気持ちが出て、変に大事にいってしまうんです。試合中でも思い出すくらい、リラックスしなければいけないと思います」。後ろ体重になっていたフォームを修正し、ウエスタン・リーグでも安定感を増してきた。シンプルに腕を振ることで再び、1軍の舞台で輝く日を待つ。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)



