チームに浸透する九里亜蓮の“習慣” 滲み出る人柄…どんな時も礼を尽くす理由

オリックス・九里亜蓮【写真:北野正樹】
オリックス・九里亜蓮【写真:北野正樹】

SNSでも話題になる九里亜蓮の礼儀正しさ

 礼節を持って接する。オリックスの九里亜蓮投手は試合開始直前、審判に丁寧に挨拶することを習慣としている。「これからお世話になるので、お願いしますという意味合いを込めています」と当然のことのように説明した。

 ベンチで野手やスタッフらとグータッチをかわし、ファウルグラウンドでの投球練習を終え先発マウンドに向かう際、審判に一礼するのが九里のルーティンだ。右手に持った帽子を体の前で交差させ、深々と頭を下げる丁寧なおじぎ。主審からボールをもらう際に笑顔で頭を下げる仕草も含め、「試合前の挨拶といい審判からボールをもらう時の笑顔が、九里さんの人柄の良さが出ている」などとSNS上で話題となっている。

 九里は「いつからかはわかりませんが、広島時代からやっていました」と言い、「審判の方がいらっしゃって、初めてゲームが成り立つというのがありますから」と説明する。守備位置に就いた野手が塁審に帽子を取って挨拶するのはよく見られるが、投手が挨拶をする姿を見ることはあまりない。集中力を高め緊張感を持ってマウンドに向かう投手がほとんどの中で、九里はそんな時でも平常心を保つことができるのだろう。

 オリックスのある投手は、九里の挨拶について「SNSで見ました。九里さんは礼儀やマナーを重んじる方ですから、審判の方にもきちんと挨拶されるのだと思います。僕もボールをもらった時に帽子を取って頭を下げることはありますが、あんなに丁寧な挨拶をする余裕はありません」と話す。九里はベンチでのグータッチについても「ずっとやっています。『今日もよろしくね』『頑張りましょう』っていう感じです」と笑顔で明かす。

 今季、広島から海外FA権を行使してオリックスに移籍した九里は春季キャンプ第1クールで、投手陣を前に野球人としての心構えを説いたことがあった。厚澤和幸投手コーチによると「練習する態度や姿勢、心構えのような話」だったという。

「アツさん(厚澤コーチ)が言われた通りだと思います。そんな大した話ではありません」と九里は話す。だが、その後は選手間だけでなく部外者に挨拶する際にサングラスを外して対応するなど、選手の意識は確かに変わりつつある。先発投手として「年間200イニング登板」を公言し、1イニングでも長くマウンドを守り、ブルペン陣の負担を軽減するなどチームを支える九里。人格者として、グラウンド以外での貢献も大きい。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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