西武ドラ2が誇る“大谷翔平級”の「179」 隠れ首位打者浮上のワケ「自分の持ち味」

オリックス戦に出場した西武・渡部聖弥【写真:小林靖】
オリックス戦に出場した西武・渡部聖弥【写真:小林靖】

西武の渡部聖弥が右足首捻挫から復帰、5打数2安打で打率.426

■オリックス 6ー2 西武(26日・ベルーナドーム)

 右足首の捻挫で戦列を離れていた西武のドラフト2位ルーキー・渡部聖弥外野手が25日、再登録され即、本拠地ベルーナドームで行われたオリックス戦に「3番・左翼」で出場。内野安打2本を放ち、5打数2安打で上々の再スタートを切った。今季出場12試合中、3分の2にあたる8試合でマルチヒットを記録し、今季打率は.426(47打数20安打)。規定打席に達していないものの、リーグトップのオリックス・太田椋内野手の.424を上回っている(成績は25日現在、以下同)。

 猛打が再起動された。13日ぶりに1軍戦へ戻ってきた渡部聖は初回、1死一塁で第1打席を迎えるとカウント2-1から、オリックス先発・九里亜蓮投手の130キロのカットボールをスイング。打球は投手の正面を襲い、九里のグラブを弾いて内野安打となった。「あの球速帯の変化球を狙っていました。少し引っ掛けてしまい、ラッキーな当たりでしたが、復帰して最初の打席でヒットになり、気持ちが楽になりました」と胸をなでおろした。

 3回1死走者なしでの第2打席は、カウント2-2から真ん中に来た九里のチェンジアップをとらえ、打球は三塁線へ。相手三塁手・宗佑磨内野手のスライディングキャッチに阻まれたものの、これも内野安打となった。

 今季通算20安打中、4本が内野安打だ。他にも今月8日のロッテ戦では、種市篤暉投手の147キロの速球にバットを粉砕されながら打球を左前に運んだヒットがあった。引っ掛けようが、バットを折られようが、ヒットになる打球が多いのが持ち味で、高打率の要因となっている。

 それは単なるラッキーではない。渡部聖自身が「運がいいのも確かですが、自分は打球速度が持ち味なので、少し引っ掛けても、ある程度速度が出ていることによって、相手野手が捕りにくかったり、追いつけなかったりということがあるのかもしれません」と自己分析している。

登録抹消中にも打球速度はアップしMAX179キロをマーク

 渡部聖は登録抹消中、疲れが取れ、トレーニングやストレッチを入念に行ったためか、持ち味の打球速度がまたアップし、MAX179キロに達したという。昨季のドジャース・大谷翔平投手の打球速度がMAX113.1マイル(約182キロ)、平均94.6マイル(約152キロ)とされていることから、渡部聖の打球速度もプロでトップ級と言っていいだろう。

 今月12日の日本ハム戦(エスコンフィールド)で走塁中に右足首を痛め、翌日に登録を抹消された。その時点で打率リーグトップを走っていたとあって「もったいない」という思いが強かった。抹消中は1軍の試合の結果をチェックしながらも、リアルタイムで観戦することはなかった。「試合を見ていると悔しいですし、見るだけで上手くなることはないですから。本拠地で1軍のナイターがある時は、歓声などが聞こえてくるので、自分がチャンスで打席に立っているところなどをイメージしながら、(隣接する)室内練習場でバッティング練習をしていました」と振り返る。

「(抹消期間は)短かった言われますが、自分的にはめちゃくちゃ長く感じました。(抹消後)3~4日目くらいから早く戻りたくて、カレンダーを見ながら(再登録可能となる日を目指して)やっていました。うずうずしていたので、やっと来たという感じです」と笑う。

 再登録と同時に、解き放たれたように離脱前と変わらない打棒を振るいはじめた渡部聖。「相手投手の持ち球を頭に入れて、狙い球を明確にして打席に入りました。狙い球を絞って打つことができたという面で、よかったと思います」と語るように、活躍の裏にきちんとした根拠がある。今後は相手に研究されるだろうが、新人王のみならず、打撃タイトル争いに絡む可能性まで感じさせる逸材だ。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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