ドラ2が残す衝撃「.448」…秘密は“試合前の習慣” 成長を示す「3つの驚異」

西武・渡部聖弥【写真:小林靖】
西武・渡部聖弥【写真:小林靖】

西口監督も「どこまで続くのだろうか」と目を白黒させる活躍

■西武 7ー1 楽天(29日・ベルーナドーム)

 西武のドラフト2位ルーキー・渡部聖弥外野手は29日、本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦に「3番・左翼」でスタメン出場し、初回に先制中前打を放つなど5打数2安打2打点。5試合連続マルチヒットを記録し、今季打率は驚異の.448に達した(成績は29日現在、以下同)。

 新人である以上、相手投手はほとんどが初対戦で、アマチュア時代に比べると格段にレベルが高いわけだが、渡部聖の優秀なところは、事前に相手投手をデータと映像で徹底的に分析し、狙い球を絞って打席に立っていることだ。

「毎晩就寝前、まずその日の反省をして、それから翌日の相手先発投手のデータ、映像を見ながら、どうしたら打てるかというイメージをつくります。翌日球場に着いてからは、データ班の方々に狙い球など自分の考えを聞いていただいて、アドバイスをもらっています」と明かす。

 この日も相手先発は初対戦の左腕・古謝樹投手だったが、当然前夜に分析済みだった。「外角寄りのシンカー系の半速球は追いかけないようにして、外角寄りの真っすぐと、外角から内側に入ってくるスライダーを待っていました」という対策通りの打撃を披露した。初回1死二塁で迎えた第1打席。カウント1-1から内角に来た古謝のスライダーを捉え、“教科書通り”のピッチャー返しで中前へ運び、チームに先取点をもたらしたのだ。

 6回2死一塁での第4打席では、古謝が初球に投じた真ん中付近のストレートを“逆方向”へ運ぶ。ライトオーバーの二塁打で、一塁走者を一気にホームへ迎え入れた。

 西口文也監督が「(渡部聖は)勝負強さを発揮してくれいる。どこまで続くのだろうかと思いながら見ていますよ」と目を白黒させるほどの活躍だ。ドラフト2位入団だが、今のところ、他球団の楽天ドラフト1位・宗山塁内野手、ロッテ1位・西川史礁外野手、オリックス1位・麦谷祐介外野手らをしのぐ輝きを放っている。新人王争いでスタートダッシュを決めた格好である。

右足首捻挫で12日間の出場選手登録抹消がたたり規定打席に未達

 渡部聖の今季成績は様々な面で突出している。たとえば、以下のような数字だ。

1.本拠地ベルーナドームでは8試合に出場し無安打なし。

 打率.516(31打数16安打)で、本拠地と圧倒的に相性がいい。渡部聖本人は「球場によっての違いは、あまり感じていません。ただ、やはりベルーナドームは声援が大きいので、気持ちが“上がる”というのはありますね」とうなずく。

2.出場した15試合(全てスタメン)中、11試合でマルチヒット。圧倒的“マルチ率”。

「第1、第2打席など早い段階で1本が出ることが多く、比較的気楽に後半の打席に臨めているのがいいと思います」と自己分析する。確かに、最近5試合連続で第1打席に出塁(4安打1四球)。そのうち第1、第2打席に連続安打しているケースが3度ある。一方、無安打に終わったのはわずか2試合。

3.今季打率.448(58打数26安打)は、リーグ首位打者争いトップのオリックス・太田椋内野手の.417を上回っている。

 右足首捻挫で今月13日から24日まで12日間、出場選手登録を抹消されていたことがたたり、今のところ規定打席数に12足りない。とはいえ、この勢いで出場を重ねていけば、新人王どころか、シーズン終盤には首位打者争いに絡んでいてもおかしくない。そう水を向けると、渡部聖は「まだ開幕から1か月なので。まだこれからです」と苦笑した。想定を超える大活躍を演じても、浮かれたとこを感じさせず、いい意味で新人らしからぬ落ち着きを漂わせている。

 チームはこの日7-1と快勝を収め、6試合ぶりに勝率5割復帰を果たした(今季12勝12敗)。昨季はチーム打率.212という記録的貧打で最下位に沈んだ西武だが、今季はルーキーの猛打でガラリとムードが変わっている。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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