ドラ2の“隠れ首位打者”、自覚する弱点 指摘されたプロとアマの違い、浮上した課題

初対戦の楽天・藤井に対し「狙っていた」ストレートを右中間へ運んだ
■西武 3ー1 楽天(4月30日・ベルーナドーム)
猛打が止まらない。西武のドラフト2位ルーキー・渡部聖弥外野手は4月30日、本拠地ベルーナドームで行われた楽天戦に「3番・左翼」で出場し、初回無死二、三塁の好機に右中間を破る先制2点三塁打を放った。同27日のオリックス戦、29日の楽天戦(いずれもベルーナドーム)に続く、3試合連続の初回先制適時打でチームの4連勝の原動力となった。この驚異の新人に“弱点”はないのだろうか……。
初対戦の楽天先発の左腕・藤井聖投手に対しても、事前にデータと映像で対策を立てて臨んだとあって、迷いがなかった。初回のチャンスに、カウント0-1から真ん中高めに来た141キロのストレートを捉える。打球は右中間を深々と破り、2人の走者をホームに迎え入れた。「狙い球をある程度絞って打っています。狙っていたストレートが真ん中に来た分、打球方向が少し“逆方向”になりました」と自ら解説した。
3試合連続の初回先制打については「初回は相手投手も少し探りながら来るので、比較的甘い球が多いのだと思います」と分析し、「初回に点が入れば味方投手が投げやすくなるので、そういう意味では先制点にはこだわりたいなと思います」とうなずいた。
今季打率は.435(4月30日現在、以下同)。右足首を捻挫して12日間出場選手登録を抹消されていた影響で、規定打席には12打席足りないが、首位打者争いトップのオリックス・太田椋内野手の.411を上回る数字である。
新人王争いでもスタートダッシュでいきなり他の候補に差をつけた格好。この日対戦した楽天には今年のルーキーきっての目玉といわれる宗山塁内野手がいるが、「正直言って、気にならないです。自分が対決しているのは、相手の投手なので。もしも新人王争いでシーズン後半に話題になることがあったら、気になるのかもしれませんが、今は全く気になりません」と屈託のない笑みを浮かべた。
仁志コーチとトレーナーが話し合い、エクササイズを作成
そんな渡部聖は177センチ、88キロのがっちりとした体形。ウエートトレーニングで蓄えた筋肉量、右足首の捻挫による戦線離脱からもほぼ“最短”で戻ってきた頑健さを誇るが、本人は「自分は体が硬いです」と苦笑する。
「体が硬くても、アマチュア時代は大きな怪我をしなかったのですが、自分の場合は骨盤が前傾しやすく、プロの長いシーズンでは疲れが背中に来ると言われています。それに骨盤が前傾していると、打撃でかかとの方に体重がかかり、外角球に体が開きがちになるようです」と語る。そして「体を柔らかくして、骨盤をしっかり動かせるように、仁志(敏久野手チーフ兼打撃コーチ)さんとトレーナーさんが話し合って考えてくださったエクササイズを、試合前の練習中にやっています」と明かす。
コーチも技術だけを教える時代ではないようで、渡部聖の体質改善に乗り出している仁志コーチは「僕自身、こういうことが大切だと気付いたのは現役時代の後半でした。もっと早く気づいていれば、もう少し長くやれたのかもしれませんね」と述懐する。
驚異的な成績を残しながら、思慮深く、人当たりは柔らかい渡部聖。シーズン後半、さらには今後の現役生活へ向けて、息の長い選手になれる態勢を整えていってほしいものだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)




