山崎伊織がセ新記録を樹立できた理由 侍コーチも称賛…明かした“失投しない投球術”

巨人・山崎が開幕35回連続無失点のセ・リーグ記録を樹立
■巨人 2ー0 広島(4月30日・東京ドーム)
2点リードの7回1死一、二塁。巨人・山崎伊織投手は最後の力を振り絞った。外角低めフォークを集めて代打・坂倉を空振り三振。続く堂林には全球フォーク勝負だ。初球こそ真ん中に入ったものの、4球で空振り三振。雄叫びをあげてベンチへ引き上げた。
「投げミスもいっぱいありました。坂倉、堂林さんには打たれてもおかしくないような球を投げていた。ただ、追い込んでから低く意識して投げきれたのが良かったと思います」
初回の無失点で開幕29イニング連続無失点。2007年高橋尚成の球団記録を更新すると、7回までゼロを並べて35回連続無失点に。1963年中井悦雄、2023年村上頌樹(ともに阪神)がマークしたセ・リーグ記録の31回を塗り替えた。
昨季まで2年連続で2桁勝利をマーク。元々ポテンシャルは高いが、村田善則総合コーチ、正捕手・甲斐拓也らバッテリー間の密なコミュニケーションが春の快記録につながった。
「村田さんからはストライクの取り方を言われます。ファウル、空振り、見逃し。どこで、どの球でストライクを取るか。初球から来ない打者は見逃しでストライクをとろうとか、初球から来る打者はボールゾーンで誘って空振りでストライクをとろうとか。そういった球を今は比較的投げられている。(それで)ゼロに抑えられている部分はあると思います」
投手にとってコントロールミスは付きものだが、決して痛打につなげない工夫も施している。
「(投げミスでも)抜けるよりは引っかかった方がいいとか、高いよりは低い方がいいとか。頭を整理して投げることができている。甲斐さんが求めている球はどんな球なのか。マウンドで考えながら投げることが出来ている」
投げミスもコントロールできているからこその快記録だ。村田コーチも「自分の中で整理してマウンドに立てているだろうし、そのイメージに近い投球が表現できているから成績がついてきている。拓也と話し合いながらできている。それがいい方向にいっているのは間違いない。昨年以上に1球1球に意思があると言うのも事実」と目を細めた。
村田コーチは侍ジャパンで長年バッテリーコーチを務めている。山崎の投げミスを失投にしない“特殊能力”は、歴代の代表投手たちが兼ね備えている投球術だという。「代表はそういう選手の集まりだと思っています。そこまでできる選手は長く活躍している選手が多い」と続けた。
東海大4年時の2020年6月に右肘トミージョン手術を受け、プロ1年目の2021年はリハビリ生活だった。山崎は「(プロ生活は)リハビリから始まったんですけど、ここまで投げられるとは思わなかったです。リハビリしている時は投げている姿も想像つかなかった」と振り返った。開幕から連続イニング無失点のプロ野球記録は1939年高橋敏(阪急)の38回1/3。次戦はNPB新記録の期待がかかる。