5年目の川瀬堅斗に響いた「根拠のない自信」 不安を払拭した“逆転の発想”

オリックス・川瀬堅斗【写真:栗木一考】
オリックス・川瀬堅斗【写真:栗木一考】

コーチの言葉以降、好投を続ける

 オリックスの育成出身で5年目の川瀬堅斗投手が、中継ぎとして存在感を示している。才能を開花させたのは、風呂場での指導者のある一言だった。

「打たれた試合の後のお風呂で、ヘッド(水本勝己ヘッドコーチ)から『根拠のない自信を持ちなさい。打ってみろというくらいの気持ちで投げたら』と言ってもらって。そこからですね、打者を上から見下ろすというか、気持ちが楽になりました」

 川瀬はソフトバンクの川瀬晃内野手の弟で、大分商から2020年育成ドラフト1位で入団。2024年7月30日に支配下登録され、今季は目標としてきた開幕1軍を果たした。

 打たれた試合は、今季初登板となった4月8日のソフトバンク戦(京セラドーム)。0-3の6回から登板し、4短長打を浴び2点を与えてしまった。チームはその裏、頓宮裕真捕手の2ランで追い上げただけに、悔やまれる失点だった。

 結果を残せず球場内の風呂場で気持ちを静めていた川瀬に、水本ヘッドが声を掛けてくれた。「もっと自信を持って投げたら、というお話でした。根拠のない自信を持つことも大事だぞ、って」。例え実績がなくても、自分はできるんだと思い成功体験を積むことで自信をつけていくという逆転の発想だ。

 シーズン途中で支配下登録された昨季は、1軍で中継ぎとして8試合(10回1/3、0勝1敗、防御率3.48)に登板。今季は開幕から1軍に同行したが、経験不足は否めなかった。「結果を求めるというか、不安でしたね。打たれたらどうしようという思いがありました」と吐露する。その不安が、水本ヘッドの言葉で霧散した。「今でもブルペンからマウンドに向かうまでは緊張します。でも、マウンドを任されたのは自分で、打たれたら僕の責任。誰のせいでもありませんから」。いい意味で開き直ることができた。以後の8試合登板で、回またぎを含め8回1/3で失点、自責点0を継続している。

 育成時代は先発要員として起用されることが多く、苦手だったという中継ぎ。「先発と違って肩の作り方もわからず、結局、(試合への)入り方が悪くて点を取られるということがファームでもありました。早く肩を作ることにも慣れました。ゆくゆくは先発もしたいと思いますが、今はどんな場面でも1軍で投げたいですね」。宇田川優希投手や小木田敦也投手、吉田輝星投手がトミー・ジョン手術で離脱し、手薄になった中継ぎ陣を若いパワーでカバーしてみせる。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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