「早くしないとメジャー行っちゃう」先輩 それでも宮國が助言を求めない理由

オリックス・宮國凌空(左)と宮城大弥【写真:北野正樹】
オリックス・宮國凌空(左)と宮城大弥【写真:北野正樹】

2イニング目の入り方に課題

 オリックスの育成2年目・宮國凌空投手が、郷里の先輩である宮城大弥投手のすごさを改めて痛感している。

「素晴らしいです。そんな選手は(プロの)同級生にも、一つ上にもいません」。宮國が、感嘆の表情を浮かべたのは、プロ2年目の成績に話が及んだ時だった。

 宮國は沖縄県宜野湾市出身。宮城も汗を流した「宜野湾ポニーズ」で本格的に野球を始め、東邦高(愛知)から2023年育成ドラフト3位で入団。1年目はウエスタン・リーグで6試合に出場し、主に中継ぎで登板し0勝1敗、防御率7.59。今季は、先発起用され支配下入りを目指している。初登板はチームの開幕戦となった3月5日の教育リーグ、阪神戦(SGL)。首脳陣の期待の大きさを感じる起用に、「キャンプ中に、ブルペンやライブバッティング登板で調整して、1戦目に合わせてきました。アピールするチャンスを与えてくれているんだというのは、感じました」と宮國。

 しかし、初戦は2回44球、被安打4の2四球2失点で降板した。「1イニング目はいいのですが、2イニング目の入り方がまだ全然わからない状態で、球数がかかってしまって。ベンチ前のキャッチボールでも、1イニング目とは違うな、という感じでした」。

宮城の投球を研究して“3回の壁”クリア

 悩んだ先にあったのは、宮城のピッチングだった。興南高から2019年ドラフト1位で入団した左腕は、1年目の終盤にプロ初勝利を挙げ、2年目は開幕ローテーション入りし、13勝を挙げて新人王に輝いた。

「僕とは、入り方が違うんですよね。僕はマウンドに上がった瞬間、バンバン投げてしまって」。秘密を探ろうと、宮城の開幕戦をテレビ観戦し、データも確認した。「単純に言うと、ストライクの確率でした。また、宮城さんはMAXで150キロ以上出していますけれど、毎回、150キロを出しているわけではありません。平均的に質のいいボールを投げているんです。1球で終わる打者もいます。僕が2回で50球のところを、宮城さんは4回や5回で50球なんです」。力を込めて投げることだけに集中してしまうのは、経験も含めた“若さ”なのだろう。

 成長する姿も見せている。4月17日の中日戦(杉本商事バファローズスタジアム舞洲)では、初めて3回を投げ切り被安打2、3奪三振、3与四球の無失点で“3回の壁”をクリアすることができた。

「やっぱり先発をするとなったら、質のいいボールを同じように投げていかないといけないですし、別に空振りを取る必要もありません。1球で打ってもらえたら楽ですし。失敗といえば失敗なんですが、いい勉強ができていると思います」

 後輩をかわいがってくれる宮城とは、タメ口で話せる間柄だ。それでも、まだ宮城にアドバイスを求めていない。「聞くなら、もっと技術的なことを聞きます。早いうちに僕も成長していかないと、メジャーに行ってしまうかもわかりませんから(笑)」。チームの戦力になって宮城と同じ土俵で話ができる日を追い求める。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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