2度の就活“失敗”…登録者35万人超、野球実況YouTubeクリエイター誕生の背景

人気実況YouTubeクリエイターのハムショーさん「感慨深い」
スポーツ・チャンネル「DAZN」は、毎週金曜日にプロ野球公式戦の1試合を無料で配信する「FRIDAY BASEBALL LIVE」を実施している。その中で4月25日から「インフルエンサー 実況配信」を新たにスタート。初回となった日本ハム-ロッテでは、人気実況YouTubeクリエイターのハムショーさんが自身初の映像付き配信で実況を務め、DAZN関係者が「1人当たりの平均視聴時間が長かった」と驚くほど、高い注目を集めた。
「僕にとって夢が叶った一日でした。いろいろ遠回りもありましたけど、映像付きで実況することができたのは凄く大きい一日でした。新鮮さは視聴者も感じてくれたようだし、ありがたいことに好評の声が多かったです。視聴者はもちろん、家族や友人が『ずっと言ってたもんな』って喜んでくれたので、凄くうれしかったですね。やり続けて良かったなと、感慨深い気持ちになりました」
幼少期を札幌市で過ごしたハムショーさんは、日本ハムが本拠地を北海道に移した2004年から熱狂的な野球ファンである。2004年は夏の甲子園で駒大苫小牧が優勝。北の大地に初めて優勝旗が渡り「その頃から高校野球、プロ野球はよく見ていました。本当にどっぷり野球に、特に日本ハムファイターズに浸かっていました」という。
最初に好きになった選手は二塁を守っていた田中賢介氏。同氏の現役時代のイメージカラーであるピンクのリストバンドを「手につけて学校に行ってました」というほどだった。小1の時の夏休みの自由研究は、新聞記事を切り貼りした「ファイターズノート」の制作。土日は毎週のように札幌ドームに観戦に行って野球の魅力にはまっていった。
「アナウンサーになりたい。ファイターズの実況をしたい」。そう考えたのが高3の春。元々、北海道大学への進学を考えていたが「大学の講座、アナウンスのスクールは東京に多い。東京に行った方がなりやすいと思いました」。両親を説得し、上京して法大に進学。土日も休まず、単位に含まれない課外授業も積極的に受講した。
そうして迎えた就職活動は「全国津々浦々じゃないですけど、いろんな局を受けました」。最終面接まで進んだテレビ局も複数あったが、狭き門に阻まれ続けた。「やりたいのはスポーツ実況。そのためには当時はアナウンサーしかなかった。心境はモヤモヤしていました」。就職浪人して再挑戦したが夢は叶わなかった。
今後の目標は「YouTubeチャンネルとして登録者数100万人」
3度目の挑戦も視野に入れていた2022年3月。「2年間落とされて、何も変わってなければ絶対また落ちる。何かしら変えなきゃ。これだけやったぞ、というのを残せたら変わるかも。実況の練習しよう」。アナウンサーになるために開設したのがYouTubeチャンネル「ハムショーのスポーツ実況ch」。内定していた一般企業に断りを入れて、新たな道を歩み出した。
現在はチャンネル登録者数が35万人以上。年々活躍の場を広げ、今季からはパ・リーグ球団主催試合のスポーツ実況配信に関する配信許諾契約を締結し、公認でYouTube配信を行っている。また、かつて日本ハムに在籍した大谷翔平投手が所属するドジャースの試合も実況生配信する日々だ。
そんな人気YouTubeクリエイターは、2軍の選手にも目を配っている。注目している選手で最初に名前が出たのが21歳の達孝太投手。2021年ドラフト1位で入団した194センチの大型右腕だ。「絶対どこかで出てくるのは分かっている。いつブレークするかという選手。体も大きくなって、球速も毎年上がって順調にステップアップしている。夢はメジャーリーグという選手で、ファイターズとマッチしている。この球団で育って、世界の投手に羽ばたいていく。凄く楽しみです」。
自身の今後の目標は「YouTubeチャンネルとして登録者数100万人」を掲げる。「目的というか手段。それくらい影響力をつけていきたい。選手を応援するエネルギーをどれだけ高められるか。高めて、選手に伝えられる存在になれたらと思っています」。9日にはDAZNで自身2度目となる映像付き配信が予定されている。
解説者がいないYouTube配信。実況1人で番組を回す難しさがある一方で新しい発見もある。「技術の話はあまりできないので、データなどの情報はできるだけ伝えるようにしています。YouTubeの場合、コメント欄が絶えず流れていて、視聴者との交流みたいな感じでコメントを拾って伝えたりもしています」。常に試行錯誤しながら、成長を続ける26歳のハムショーさん。「いつか来るかもしれない解説者がついた時のための勉強もして、その日を迎えられたらなと思います」。楽しみながらも貪欲に、野球実況の道を極めていく。
(尾辻剛 / Go Otsuji)