山中稜真が激白「恐怖と隣り合わせ」 1軍で感じる重圧…心に秘める中川圭太の言葉

オリックス・山中稜真(左)と中川圭太【写真:小林靖】
オリックス・山中稜真(左)と中川圭太【写真:小林靖】

4日まで13試合に出場…打率.150、1本塁打

 迷う心を、“無敵の中川”の一言が吹き飛ばしてくれた。オリックスのドラフト4位・山中稜真捕手が、新人として史上初めて交流戦首位打者を獲得したチームの先輩、中川圭太外野手のアドバイスを胸にプレーを続けている。

「(プロで)何もわからない自分に、的確なアドバイスをくださるんです。すごく勉強になることばかりで、感謝しかありません」。尊敬する先輩に頭を垂れた。助言を受けたのは、オープン戦中盤の3月11日からの名古屋遠征だった。誘われた食事の席で、中川は「1年目の今の時期は、もう後先を考えずにいけるところまでいったらいいよ」という言葉を贈ってくれた。

 山中は木更津中央高、青学大、三菱重工Eastから入団。春季キャンプでは堅実な守備と広角に強い打球を放つ打撃が評価され、岸田護監督からキャンプのMVPに選ばれた。7日の巨人戦(京セラドーム)から1軍に同行した直後でわからないことだらけの山中にとって、参考になる話ばかりだった。

 一方の中川は、PL学園、東洋大から2018年ドラフト7位で入団した。開幕1軍は逃したが、4月20日に昇格。交流戦では全18試合に出場して打率.386をマークし、新人として史上初めて首位打者に輝いた。それだけに、山中にとって聞きたい話は山ほどあった。

 最も聞いてみたかったのが、交流戦での経験だった。「圭太さん自身、開幕して1か月あたりが、すごくきつかったと話されていました。だから、『いけるところまでいけ』とおっしゃってくださったのだと思います。相手選手も含めてよく見ていらっしゃいますから、『こんな時にはこうしたらいいぞ』と、はっきりと的確に話をしてくださるんです。聞き入ってしまうほどで、すごく勉強になることばかりなんです」と山中。

 オリックスの外野陣は中川や西川龍馬外野手、杉本裕太郎外野手のほか、ドラフト1位の新人、麦谷祐介外野手(富士大)ら強打の選手がしのぎを削る激戦区。そんな中で山中は、4月30日までの27試合のうち、12試合に出場し、39打数6安打、3打点、打率.154。打率こそ低いが、捉えた打球が野手の正面を突く不運が続くなど打撃の内容は悪くない。安打の半分の打点を稼ぎ、チャンスに強いところをアピールしている。

開幕から1か月「初心のそういうところは薄れてきてしまって」

 開幕して1か月。中川のアドバイスの意味が分かる場面がやってきた。4月最後の出場となった29日のロッテ戦(同)。「2番・左翼」で先発起用されたが、見逃しばかりで3三振を喫してしまった。

「豪快に振りにいけばいいところを、当てにいってしまったりする打席が続いていたので、あの日は積極的にいくという頭はあったのですが、シンプルにいけばいいのに余計なことを考えて、全部後手に回ってしまって。あそこまで何もできない打席が続いたのは初めてでした」と振り返る。

「圭太さんが言われた通り、突っ走るつもりでいたのですが、良くも悪くも慣れてきて周りが見えてきてしまうと、初心のそういうところは薄れてきてしまって」とも反省。春季キャンプから積極性をテーマに掲げて結果を出していたのに、結果を求めて歯車が狂い出してしまったのだった。

「毎日、いつ下(2軍)にいくのかという恐怖と隣り合わせでした。当たりが悪くても安打の『H』ランプがついた方がいいとも思いましたが、指導者の方からは『ヒットを打とうとせず、思い切っていけ』と言われています。自分の中で割り切ることが大事だと思います」。積極的という一番の武器を最大限に生かし、チームの勝利に貢献するつもりだ。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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