想像を超えた肘の状態…踏み切った大手術も オリ小木田が笑顔で「良かった」と語る理由

「これ以上、チームに迷惑をかけられない」
決断は間違っていなかった。オリックスの小木田敦也投手が右肘内側側副靭帯再建術(TJ手術)、鏡視下右肘頭骨棘切除術を受けた。大きな痛みがなく手術を見送り調整を進めてきたが、手術してみると想像以上に肘の状態は悪かったことが判明。出力低下の原因がわかり、復帰に向けてのリハビリに入った。
「もう、明るい未来しかないですよ」
退院したばかりの小木田が、明るい表情で声を弾ませた。4月17日に横浜市内の病院で手術を受け、1週間後に退院。翌日には早くも大阪・舞洲の球団施設に姿を見せた。
小木田は角館高(秋田)、TDKから2021年ドラフト7位で入団、150キロ台のストレートに多彩な変化球を交え、ロングリリーフをこなしてきた右腕。2023年は38試合に登板し、4勝0敗7ホールド、防御率2.19でリーグ3連覇に貢献した。山本由伸投手(ドジャース)や宇田川優希投手らと同じ1998年生まれで、ファンの間では「小木田世代」として親しまれている。
しかし、2024年は右肘を痛め、5月に戦線離脱。懸命にリハビリに務めたが、夏ごろには社会人時代からの古傷の右肩にも異変が生じ、シーズン中に復帰することはできなかった。シーズン後、宮崎でのフェニックス・リーグでの復帰を目指したが、状態は上向かず見送ることに。
復活を期した今春のキャンプでは、終盤に実戦的な打撃練習に登板し、3月には教育リーグで2試合に登板。3月11日からの1軍の名古屋遠征に同行するまで順調な回復ぶりを示した。小木田によると「思うように投げることはできなかったが、痛みはひどくなく手術の選択肢は低かった」という。開幕前に吉田輝星投手、宇田川が相次いでTJ手術に踏み切り、中継ぎ陣が手薄になったことも小木田に手術を思いとどまらせてきた。
一度は1軍に合流したものの、出力を思うように出せなかったことで「これ以上、チームに迷惑をかけられない」と手術する気持ちに傾いた。手術で、肘は想像以上のダメージを受けていたことがわかり「手術をしてよかったと思いました」と安堵の表情を浮かべた。
回復までは1年以上かかる。肩の故障でも1か月以上休まなかったタフネスぶりを誇る小木田だが、復帰に備えじっくりと体と向き合う。昨年9月に誕生した男児の物心がつく時には、完全復活し“小木田世代”の先頭に立ってチームを引っ張るつもりだ。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)



