発掘された“未完の大器”→支配下即スタメン 他球団も注目した25歳「育成レベルではない」

ソフトバンク戦に出場した西武・モンテル【写真:小林靖】
ソフトバンク戦に出場した西武・モンテル【写真:小林靖】

7日に支配下契約を交わし即1軍「9番・右翼」でスタメン出場

■西武 7ー1 ソフトバンク(7日・ベルーナドーム)

 育成契約3年目を迎えていた25歳の西武・モンテル(本名・日隈モンテル)外野手が7日、支配下選手契約を交わし、早速本拠地ベルーナドームで行われたソフトバンク戦に「9番・右翼」でスタメン出場。西武が2022年オフから独自に行っている“身体能力重視”の入団テストで1期生として発掘された変わり種だ。1軍デビュー戦は3打数無安打2三振に終わったが、球団の期待は大きい。

 2回1死走者なしで初打席に立ったモンテルは、ソフトバンク先発の東浜巨投手に対し、カウント2-2から外角低めに落ちるスライダーを振らされ三振。5回先頭での第2打席は、2番手・尾形崇斗投手の151キロの速球に捕飛。7回1死走者なしでの第3打席も、左腕ダーウィンゾン・ヘルナンデス投手のインローへのスライダーにバットが空を切った。

「1軍の投手の変化球は切れが違いました。元々ボール球の変化球を振ってしまうことが多いので、見極めをはっきりしたいなと改めて思いました」と反省しつつ、初体験の緊張感を味わい「楽しめました」と笑顔がはじけた。

 沖縄県出身のモンテルは、投手として金光大阪高、滋賀県の社会人クラブチーム「OBC高島」、沖縄県の琉球ブルーオーシャンズでプレー。2022年に四国アイランドリーグplus・徳島と契約すると、同年7月に野手に転向し、そして同年10月には西武の入団テストを受験した。

 プロ球団の入団テストといえば、50メートル走と遠投を行い、合格者が実技試験(ブルペン投球やノック、フリー打撃など)に進むのが“定番”。しかし、西武はこの年から新機軸を打ち出していた。「GO/NO GO課題」(「→」ランプが灯ったらスタートを切り、「←」ランプならその場に停止。その反応速度を計測する)、「インボディチェック」(体重、筋肉量、体脂肪率などを測定)、「10メートルスプリント」、「メディシンボール水平投げ」、「同垂直投げ上げ」、「ワットバイク」などを通して、技術的には成長途上であっても、抜群の身体能力を持つ選手を見いだそうとしていた。これで球団の目に留まったモンテルは、同月20日のドラフト会議で育成2位指名を受けた。野手転向からわずか3か月にして念願のプロ入りを果たしたのだった。

足の速さはチーム随一、課題の打撃も「打ち返せるようになってきた」

「プロは凄い選手ばかりで、入団当初は自分がこの世界でやっていけるのか、本当に不安でした」とモンテルは吐露する。それでも、2022年から2年間2軍外野守備走塁担当だった熊代聖人コーチ(現1軍外野守備走塁コーチ)から親身に指導を受け、「自分の売りは足と、足を生かした守備範囲だと気付かせてもらいました」と感謝する。実際、50メートル走で5秒69をマークした快足の持ち主で、チーム内で足の速さは1、2軍を含めトップクラスと認知されている。

 一方、課題は右打ちの打撃だが、「差し込まれることが多かったのですが、ミートポイントが体に近すぎたことに気付いてフォームを見直したところ、昨年のシーズン途中から、ある程度はじき返せるようになってきました」と成長を見せたことが、支配下登録につながった。今季イースタン・リーグでは24試合に出場し、打率.276(76打数21安打)、本塁打はないが、8打点3盗塁をマークしている(7日現在)。

 広池浩司球団本部長は「彼の場合は(プロ入り直前まで)ずっと投手をやっていた。よくぞこれほど短い期間で、野手として形になってきたと思います。年齢的には25歳ですが、まだまだ伸びしろがあると見ています。それに、彼には絶対に負けないぞという強い気持ち、がむしゃらな姿勢がある。そこもここまできた要因かなと思います」と評する。

 モンテルの存在は、他球団の関係者の目にも留まっていた。DeNAの高崎健太郎プロスカウトは「イースタン・リーグの試合などで何度か見ていましたが、足の速さ、外野手として打球に対する“1歩目”の早さは抜群で、育成レベルの選手ではないと感じていました。練習への取り組みもがむしゃらで、なおかつオンとオフの切り替えのできる選手という印象を受けていました」と称賛。「ああいう選手にはぜひ頑張ってほしいですね」と目を細めた。

 モンテルの2歳上の兄・日隈ジュリアス氏も、高知中央高から2015年ドラフト4位でヤクルト入りした左腕投手だったが、左肘の故障で2年目のオフには育成選手となり、2020年限りで1軍出場のないまま退団した。モンテルは「兄の夢の分もかなえたいと思ってやってきました。兄には『ここが終わりではない。この先もずっと長く野球をやってくれ』と言われました」と感慨深げに語った。くしくも、広池球団本部長も「本人には『大事なのはここから。これからが勝負だよ』と伝えました」と同じ言葉を口にした。

 人並外れた身体能力とがむしゃらさで支配下登録を勝ち取ったモンテルだが、本人にとっても球団にとっても、ここはまだゴールではない。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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