20歳右腕が刻む「0.00」 3年目でついに開花…甲子園のヒーローが飛躍出来たワケ

責任の重い場面も任され、3試合連続ホールド記録
■西武 7ー1 ソフトバンク(7日・ベルーナドーム)
西武・山田陽翔(はると)投手は今季、4月3日の楽天戦(楽天モバイルパーク)で1軍デビューを飾って以降、リリーフで9試合に登板し、9回1/3をいまだ無失点。滋賀・近江高時代に甲子園大会3季連続出場を果たしヒーローとなった右腕が、プロでも3年目にして開花の時を迎えようとしている。
7日に本拠地ベルーナドームで行われたソフトバンク戦。西武は4-1とリードして迎えた8回の攻撃で、一挙3点を奪い点差を広げた。セーブシチュエーションでなくなったことから、9回のマウンドには守護神の平良海馬投手でなく、山田が上がることになった。
先頭の山川穂高内野手を四球で歩かせたものの、続く中村晃内野手をカウント1-2から、外角いっぱいの144キロのストレートで見逃し三振に仕留める。柳町達外野手にも外角の144キロのストレートで遊ゴロ併殺打を打たせ、試合を終わらせた。打ち取ったストレートはいずれも微妙に変化したように見え、山田は「点差があったので、ストレートを多めに投げました。僕のストレートはもともと“真っスラ系”なのです。打ち取れたのはラッキーだったと思います」と笑顔を浮かべて説明した。
快調に「0」行進を続けている。4月27日の楽天戦(ベルーナドーム)から前回登板の今月3日・日本ハム戦(エスコンフィールド)までは、3試合連続ホールドをマークするなど、徐々に責任の重い場面を任されるようになってきた。「そういうことは考えず、ひたすらバッターを打ち取ることに集中するようにしています」と雑念を振り払い、「出だしはいいスタートを切れたと思いますので、シーズンを通していい投球をしていけたらと思います」と語った。
昨季はイースタン・リーグで13試合0勝3敗、防御率6.75と振るわず、1軍は遠かった。シーズンオフに台湾で開催されたアジアウインターリーグに派遣され、ここでシュートを習得したことが躍進につながった。「ファウルを取れますし、カウントを稼ぐのに適した球種だと思います。ストライクゾーン内で勝負できるようにもなりました」と効果を感じている。
松坂大輔氏らと並ぶ歴代5位タイの甲子園大会通算11勝
年明けの1月、平良が沖縄・石垣島で行った自主トレに、羽田慎之介投手、宮澤太成投手とともに参加したことも成長を促した。「毎日のトレーニングもそうですが、平良さんが栄養学、解剖学、体のメカニック、メンタルなどの専門家を呼んでくださり、講義を受けたことが勉強になりました。それまで聞いたことのなかった内容でしたから。オリンピック出場経験のある現役やり投げ選手のお話を聞くこともできました」と目を輝かせる。
近江高2年の夏からエース兼打線の中軸として、3季連続甲子園出場。ベスト4、準優勝、ベスト4の好成績を収める原動力となった。連投に耐えられるタフネスぶりを発揮し、甲子園大会通算11勝は、西武OBでもある松坂大輔氏(神奈川・横浜高)、ソフトバンクでプレーした島袋洋奨氏(沖縄・興南高)と並び歴代5位タイにランクインする。打っても、3年夏の長崎・海星高との3回戦で満塁本塁打を放った。
9日が誕生日で21歳となる。「高校時代は言われることをやるのに精いっぱいでしたが、何事も自分で情報を集め、自分の頭で考え、自分の判断でやれるようになってきたと思います」と自身の成長を実感している。
6月3日に開幕するセ・パ交流戦で打席に立つ可能性があることも、ファンにとっては楽しみの1つ。山田は「リリーフなので打席に立つかどうかはわかりませんが、打撃練習ができるだけでも楽しみです」とうなずき、「ただし、練習していないので自信は全くありません」と苦笑した。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)



