宗佑磨は「賢いがゆえの不調」 “再起の1時間”高橋コーチが語った復活への道

打撃不振で2軍調整
オリックスの宗佑磨内野手が、ズレた打撃感覚を取り戻すためにファームで調整を続けている。高い身体能力を生かした守備と、長打力を秘めた勝負強い打撃で3度のベストナインに輝いたスラッガーを狂わせたものとは。
「自分のバッティングがぐちゃぐちゃだったんで、そこを思い出しています。同じスイングができていないし、構えなんかもしっくりときていないんです」。1軍登録を抹消された翌日の5月2日、大阪・舞洲の球団施設で、宗が打ち明けた。
順調なスタートを切ったプロ11年目のはずだった。オープン戦を打率.308で終えると、開幕の楽天戦2試合「2番・三塁」で出場し9打数3安打の固め打ち。
しかし、.333あった打率はその後.200まで下降。4月25日の西武戦を最後に出場機会がなくなってしまった。
打撃を狂わせたのは、下半身のコンディション不良によるブランクだったという。楽天戦の第3試合で先発を外れた後、4月3日のロッテ戦(ZOZOマリン)でスタメン復帰したが、試合から4日間離れたことで打撃の感覚がおかしくなった。
「バッティングって水モノというじゃないですか。試合を離れたことで感覚が離れちゃって。言い訳ですが」。チームの打撃が好調で打席が多く回ってきたことも、打撃が狂い始めていた宗には逆効果だった。結果を求めて焦りが生じ、チームの流れに乗ろうとすることで悪循環に陥ってしまった。
原因は分かっている。「わかんないから、こうなっているんですけど。でも、やっぱり体が開いているんですね。開きが早いと、こうなります」。
2軍落ちした初日、宗は室内練習場で高橋信二・2軍打撃コーチと1時間近くティー打撃に向き合った。ボールを打ち込むだけでなく、高橋コーチとフォームなどを確認する作業を続けた。
「しっかりしたタイミングと、しっかりしたポイントで打つことを意識していました」と宗。高橋コーチは「こんがらがった考え方を整理していただけです。もう、シンプルにそこだけです。できないことを、あれもこれもいっぺんにやろうとしても、なかなかうまくいかないんですよ。だから、できることからやりましょうと」と指導の狙いを話す。
宗の不調の理由と解決方法を高橋コーチは「彼ほど集中力と潜在能力が高い選手はなかなかいません。何がブレーキになっているかといえば、考え過ぎだと思います、賢い選手なんで。考え過ぎると、あの短い勝負の中で迷いが生じ、体が動かなくなりパフォーマンスを下げます。彼の能力を生かすためには、集中できる環境を作ってあげることだと思います」という。
宗は、5月3日のプロアマ交流戦、アスミビルダーズ戦(杉本商事Bs舞洲)に「4番・DH」で先発出場し、4打数1安打。7日の中日戦(ナゴヤ)では4打数3安打と復調の兆しをみせた。
昨季から「試合に使ってもらえるのは、打てる選手」と、打撃を磨き続けてきた宗。狂った打撃を修正し、最短の10日間で1軍復帰を目指す。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)




