「足は引っ張りたくない」平野佳寿の盟友への気遣い…特別扱い不要「忖度なく見て」

4月11日に2軍落ち「リセットして若手と勝負してきます」
同期入団の盟友でも、忖度は不要。オリックスの平野佳寿投手が、1軍昇格に向けファームで調整を続けている。
「下(2軍)でしっかり投げて、上(1軍)に必要だと思われれば呼んでもらえるだろうし、呼ばれなかったらまた、下で調整しなければならないし、そこはみんなと一緒です。別に特別なことではありません」。平野が真剣な表情で前を見据えた。
プロ生活20年目を、同期入団の岸田護・1軍投手コーチが監督に昇格するなど新体制で迎えた。大卒・社会人出身の岸田監督とは2歳違いだが、楽しい時も苦しい時も、オリックス投手陣を支えてきた盟友だ。
「尊敬できるところばかりの方。昔から誰からも信頼されているし、裏切らないというか、本当に人間として素晴らしい先輩です。岸田さんの喜ぶ顔を見られるように僕も頑張りたい」と臨んだシーズンだった。
しかし、自身登板2戦目となった4月9日のソフトバンク戦(京セラドーム)で6‐5の9回から登板。山川穂高内野手に逆転3ランを浴びて負け投手になり、11日に1軍選手登録を抹消された。
厚澤和幸投手コーチによると、2軍落ちを告げられた平野は「一回、リセットして若手と勝負してきます。忖度なく見ていてください」と答えたという。「あれだけのレジェンドですから、こっちはそういうわけにはいかないんですが、そういうことを言ってくれるのがうれしかったですね」と厚澤コーチ。
親しい間柄だからこそ必要な距離「実力がなくて下にいっただけ」
平野には、特別な思いがあった。岸田監督とは誰が見ても親しい間柄。それだけに、厳しい実力の世界では一線を引くべきだと考え、監督就任後は「監督と選手」という関係での距離を取るようになった。
「僕が馴れ馴れしくして、今までの感じで接していて、僕が上に残っていたら、みんなから『仲良しだから』というように見られます。絶対に(首脳陣に)そんな気持ちはなくても、そう見られると岸田監督にはマイナス。岸田監督の足は引っ張りたくないので、普通の一選手として見てもらえたら。その方が僕もすっきりするし、岸田監督もすっきりするし、チームもね」
もちろん、岸田監督や厚澤コーチらは平野を特別扱いしていない。それでも、球団の功労者として配慮をすることは当然だろう。それでも平野は「コーチの方はいろいろと気遣いをしてくださりありがたいのですが、僕の場合、実力がなくて下にいっただけなんで。これが普通のことだと思います」と言い切る。2軍で1か月。日焼けしたたくましい姿で、1軍の勝負のかかったマウンドで躍動する日を目指す。
○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)

