西武時代から一変…楽天・浅村栄斗の新境地「87.9」 偉業を次々達成、円熟の技術

楽天・浅村栄斗【写真:荒川祐史】
楽天・浅村栄斗【写真:荒川祐史】

浅村は300本塁打と2000安打を序盤戦に達成

 球界屈指のスラッガーとして長年活躍を続け、楽天にとって欠かせない存在となっている浅村栄斗ない内野手。今年は「通算300本塁打」「通算2000安打」の大記録達成を控えた中で迎え、見事に達成してみせた。

 4月22日の日本ハム戦(エスコンフィールド)でプロ野球史上47人目の通算300本塁打、5月24日の同カード(楽天モバイル)では、平成生まれの選手として初の通算2000安打に到達。西武、楽天と活躍してきた大砲はいかに成長を続けたのだろうか。(数字はすべて5月24日時点)

 今季の浅村は3、4月度に打率.290、4本塁打、13打点をマークするなど、好スタートを切った。注目したいのが、球速の速いボールで好成績を残している点だ。ここまで145キロ以上の直球系の球種に対して打率.333を記録。年度別で見ると、西武時代の2018年、2016年に次ぐ好成績で、楽天加入後では最も高い数字だ。

 今季の速球に振り負けないバッティングは、西武時代に近い特徴といえるだろう。さらに4本塁打のうち、前述の通算300号を含めた3本が150キロ前後のストレートを捉えたもので、スピードボールを力強くはじき返して長打を放っている。

 打席内のアプローチにも変化が見られる。球種別のスイング率を見ると、まず2010〜18年と2019〜24年では、後者の方が直球系・それ以外の球種ともにスイング率が低く、移籍後は待球寄りの打撃スタイルにシフトしていることがうかがえる。そんな中でも、今季は直球系のスイング率が上昇。スライダーやフォークなどの変化球はに対しては慎重な姿勢を見せている。

 そして今季は、狙った直球系のボールをしっかりとバットで捉えており、コンタクト率は87.9%を記録。4年ぶりにリーグ平均を上回っている。スピードボールへの対応に重点を置くことで確実なコンタクトを実現しており、このことが145キロ以上の速球に対する高打率につながっていると考えられる。

 速球への積極性を高めた中でも、変化球に対しては慎重なアプローチを継続しており、全体としては昨季までと同様に待球傾向にある。楽天での浅村は、ボールゾーンスイング率で毎年20%台前半を記録し、今季も規定打席到達者の中でリーグ2位。四球率も12.0%と優秀で、出塁能力の高さは健在だ。

 そして今季の打撃には、待球型のスタイルを継続しているにもかかわらず2ストライクに追い込まれた打席が少ないという特徴がある。積極性と慎重さを両立することで、高い四球率を維持しながら打者にとって不利なカウントには持ち込ませない、理想的なアプローチを実現しているのだ。

 開幕から順調に安打を放っていた浅村だが、4月27日に大台到達まであと9本としたのち、そこから待ち望んだ一打が飛び出すまでには19試合を要している。記録達成後の会見では、戦ってきたプレッシャーの大きさについて吐露する場面もあった。ともあれ、彼は成し遂げた。今回味わった生みの苦しみも糧に変え、次なる目標に向かって進んでいくことだろう。念願の楽天でのリーグ制覇を目指し、背番号3はこれからもヒットを積み重ねる。

(「パ・リーグ インサイト」データスタジアム編集部)

(記事提供:パ・リーグ インサイト

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