怪我で出遅れた4か月…育成4位が苦悩した“代償” 描く夢は大谷級「ハードルが下がった」

オリックス・寺本聖一【写真:北野正樹】
オリックス・寺本聖一【写真:北野正樹】

オリックス・育成4位の寺本「ようやくプロのスタートが切れました」

 4か月遅れで“春”がきた。1月の新人合同自主トレ中に肋骨を骨折し、リハビリを続けていたオリックスの育成ドラフト4位、寺本聖一外野手が、5月27日の社会人との交流戦で実戦デビューを果たした。「ようやくプロのスタートが切れました」。初めて屋外でフリー打撃を開始した寺本が声を弾ませた。

 寺本は広島県出身。広島商、広島経大から2024年育成ドラフト4位でオリックスに入団した。170センチの体を大きく使ったフルスイングが特徴の左打者。豪快なスイングから大学の先輩、ソフトバンク・柳田悠岐外野手になぞらえて“ギータ2世”と呼ばれ注目を集めてきた。

 練習に取り組む姿勢も素晴らしく、全体練習後も納得がいくまでフォームをチェックし続ける姿があった。「そんなにハードな練習ではありません。動画をチェックしながら動きを確認していたら、量も多くなっている感覚です。やろうと思ってやっているのではなく、考えながらやっていたら2、3時間経ったという感じ」と寺本。質にこだわることで、自然に練習量が増えてしまうという。

 しかし、練習に没頭した“代償”は大きかった。肋骨を痛め1月20日に医療機関を受診すると「左第九肋骨の疲労骨折」と診断されてしまった。入団発表で掲げた目標は、メジャーでの「打率3割、40本塁打、40盗塁」だった。「大谷さんが『50‐50』を達成してハードルが下がったと思うので」とまで言ってのけた。希望に胸を膨らませて臨んだプロの世界だったが、春季キャンプは1か月間、別メニューで失意のまま過ごした。

 1か月もすれば全体練習に参加できると考えていた寺本だったが、思いのほか怪我の程度は重く、マシンを相手に打撃練習ができたのは5月9日。守備限定で試合に出場できたのは同16日だった。リハビリ期間中は、参考にしているメジャーリーガーのブライス・ハーパー内野手(フィリーズ)のほか、俊足強打のフランシスコ・リンドーア内野手(メッツ)、タティス・ジュニア内野手(パドレス)ら「体の使い方が抜群にうまい」(寺本)選手の映像を目に焼き付けたという。

「どれだけ練習したら怪我をするのかがわかりました。でも練習に対する姿勢は、自分が大切にしている部分でもあります。その取り組みでは誰にも負けたくありません。早く1軍の試合に出て、いずれは憧れるメジャーでやってみたいと思います」。同期より約4か月遅れの“球春到来”。夢の実現への道が始まった。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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