ドラフト直前に他界した祖父 起きた“不思議な現象”…仏前に2桁ユニ、清水武蔵が叶えたい夢

オリックス・清水武蔵【写真:北野正樹】
オリックス・清水武蔵【写真:北野正樹】

オリックス・育成の清水、祖父に捧げた3本塁打

 オリックスの2024年育成ドラフト2位・清水武蔵内野手が、ドラフト直前に亡くなった野球好きの祖父に、支配下登録を誓いプレーを続けている。

 清水は、鹿児島県日置市出身。野球好きの祖父・廣さんや、ボーイズリーグの監督をしていた父・智廣さんの影響で幼少の頃からボールに親しみ、強肩強打の捕手として注目を集めた。将来の目標に掲げたプロ野球選手への近道と考え東京の強豪、国士館高に進学。逆方向にも強い打球を打てる打撃でアピールし、1年秋に中堅の定位置をつかんで翌年春の選抜大会選出に貢献した。

 大会は新型コロナの影響で中止となり、1年間、対外試合ができなかったが、通算22本塁打をマーク。プロから声はかからず、独立リーグのBCL栃木ゴールデンブレーブスに入団した。

 入団後、捕手に戻った2年間は思うような成績を残せなかったが、内野に転向したことで打撃練習の時間も増え3年目に打撃が向上。リーグ3位の打率.355、同6位の9本塁打でベストナインにも輝いた。

 プロが注目したのは、9月末に開催された独立リーグのグランドチャンピオンシップだった。開催地枠で出場した大会で、清水は初戦の石狩レッドフェニックス戦で3打席連続本塁打を放った。右中間、左翼、右翼と広角に打ち分けた一発だったが、2本目に不思議な現象が起きたという。「風はずっと右翼に吹いていたんです。ストレートにバットが折れて、走り出してスコアボードの旗を見たらその時だけ、風が左に吹いていたんです」。

 実は、祖父の廣さんは大会約1週間前に亡くなっていた。ドラフト選考に影響する大事な大会。「帰らず、試合に集中しなさい」という父の言葉に、帰省せず試合に臨んだ清水にとって「2本目は祖父が打たせてくれた本塁打」だった。

 鹿児島城西高校で教頭を務めた廣さんは、清水が小学生の時に脳梗塞で倒れ、半身麻痺が残って会話も思うようにはできなかった。それでも、清水が掲載された雑誌などを読んだり、祖母が見せてくれるYouTubeの映像を観たりして、活躍を喜んでいたという。約1か月後、育成ながらプロの門をたたくことができた。年末年始に3日間、帰省し仏前にオリックス入団を報告したが、まだ、Buffaloesのユニホームを見せたことはない。

 4月に出場した2軍戦は7試合で、打率は.125。「まだ、2軍の試合に出場できるレベルではないので、技術向上に努めています。チャンスをどう生かせるかが、この世界だと思います。早ければ早いほどいいのですが、タイミングは絶対に来ると思うので、その機会を生かすための準備をしています」。早く2桁の背番号のユニホームを仏前に供えたい。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。 

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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