松尾汐恩は「見ていて不安だった」 打率.306…コーチが明かす“変化”、備える成功への素質

田代コーチ「入団したときから見ているけど、考え方もしっかりしてきた」
目覚ましい活躍ぶりだ。DeNAの高卒3年目・松尾汐恩捕手は、ここまで27試合に出場して打率.306をマーク。トレバー・バウアー投手の“相棒”を務めるなど、攻守で存在感を高め、昨季ベストナインに輝いた山本祐大捕手の牙城をも崩そうとしている。今季の成長や果てしないポテンシャル、今後の課題について2人の担当コーチに聞いた。
「持っているものはすごいよ、大したもんだよ」と目を細めたのは、1997年に横浜ベイスターズで指導者となってからユニホームを着続け、楽天や巨人なども含めて数々の打者を育て上げた“名伯楽”田代富雄野手コーチだ。「あまり言いたくないけどさ……」としつつ、「俺はあいつは首位打者も狙える選手だと思っている」と大きな期待を口にした。
昨季1軍デビューして27試合で打率.211、0本塁打、1打点。それが今季はすでに3本塁打、10打点をマークする。2022年ドラフト1位だけに元々のポテンシャルが高いのはもちろんのことだが、「入団したときから見ているけど、少し考え方もしっかりしてきた。キャンプ初日から練習への態度がちょっと違っていたもんな。精神的に大人になったんじゃないの? まだたまに緩むときもあるけどな」と“変化”を指摘する。
「何よりもメンタルが強いね。ここってときにいい打撃をする。気持ちの持って行き方がうまい。結局、いいものを持っていてもそっち(メンタル)がダメだとこの世界でメシを食っていけない。大事なものを持ち合わせている」と称えつつ、「でも(山本)祐大もいいからな。いい刺激だろうな、お互い」と相乗効果を願った。
相川コーチ「正直、昨年はプレーを見ていて不安だったんです」
また昨季は4試合だったスタメンマスクは、今季はもう13試合を数える。相川亮二1軍ディフェンスチーフコーチ兼野手コーチは「正直、昨年はプレーを見ていて不安だったんです。今季はオープン戦からそういうところは全く出ていないので、技術的な進歩だと思う」と成長を喜ぶ。さらに「準備していく中で、自分から投手に対してしっかりコミュニケーションを取ってゲームに入っていけている。当然戸柱(恭孝)も山本もやっていることですが、それがすごく時間を使ってやっているように僕には見えます」と強みを明かした。
とはいえ現状では打撃の評価が高く、捕手としてはまだ発展途上でもある。「これからもっと緊迫した中でどんなプレーができるか楽しみでもあるし、きっとたくさん痛い思いもするでしょう。みんなプレーが怖くなるというのを通ってきて、そういうのも経験してからだと思う。そこがスタート。ただそれを乗り越えるプレーヤーの能力はあると思うので」と無限の可能性を強調した。
昨季正捕手の座を手中に収めた山本、頼りがいのあるベテランとして5月30日のヤクルト戦(横浜スタジアム)では2年ぶりの本塁打も放った戸柱もいる。1つしかない席を巡り、ハイレベルな争いが繰り広げられる。「それは最高ですよ。楽しいですし、誰がいっても不安ではない」と相川コーチ。三者三様の“扇の要”が頼もしい。
(町田利衣 / Rie Machida)