山本由伸が陥った“負の連鎖” 追い打ちをかけたドジャースのミス、専門家が分析

今季初めて5回まで持たず3回2/3、4失点で降板した
【MLB】ヤンキース 7ー3 ドジャース(日本時間2日・ロサンゼルス)
ドジャースの山本由伸投手は1日(日本時間2日)、本拠地でヤンキース戦に先発したが、3回2/3を投げ4失点。今季初めて責任投球回数の5回まで持たずに降板し、4敗目(6勝)を喫した。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が“乱調”の原因を分析する。
この日の山本は珍しく制球に苦しみ、初回にいきなり28球、3回には32球を要し、4回2死一塁の場面で降板する時には、投球数は計96球に上っていた。7安打3四球1失点で、いいところが見当たらなかった投球内容。ただ、新井氏は「本人の調子がよくなかったのも確かですが、守りでも攻撃でも味方の援護がなかった」と見た。
確かにそうだ。山本は初回2死一、二塁のピンチを背負い、相手の5番ジェーソン・ドミンゲス外野手に左前打を浴びる。二塁走者が三塁を蹴り、左翼のアンディ・パヘス外野手は渾身の本塁送球。刺せるタイミングだった。ところが、捕手のはるか頭上を通過する“悪送球”となり、先制点を許したのだった。
さらに、この悪送球をバックアップした山本は、打者走者が二塁へ向かうのを見て送球。こちらもアウトのタイミングだったのだが、二塁のキケ・ヘルナンデス内野手がタッチした瞬間、グラブからボールがこぼれ落ち、セーフとなった。
「左翼のパヘスの送球は、2バウンドでも3バウンドでも、キャッチャーミットに届きさえすればアウトになるタイミングでした。そして、キケ・ヘルナンデスがボールを離さずアウトにしていれば、その後に余計な球数を要することもなかった。山本は味方に足を引っ張られる形で、リズムを崩してしまいました」と新井氏は指摘する。
攻撃もしかり。ドジャースは1点を追う2回、1死からパヘスが右翼線二塁打を放ったが、次打者トミー・エドマン外野手の初球に三盗を試み失敗。直後にエドマンの同点9号ソロが飛び出したが、盗塁失敗がなければ逆転2ランになっていただけに、惜しまれるところだ。
防御率は千賀に次ぐリーグ2位1.97→同3位2.39に跳ね上がった
三盗は、100%近い根拠がない限り試みるべきでないといわれる。「パヘスとしては、相手投手の投球フォームの情報は頭に入っていたはずで、それをいきなり発揮しようとして裏目に出たのだと思います。山本はドジャースのエースですから、味方がリードした時には、ギアを上げて相手を牛耳ることができる術を持っている。それだけに、惜しまれる盗塁失敗でした」と新井氏は言う。
パヘスは成長著しいキューバ出身の24歳で、この日も打撃では7回に11号ソロを放った。ただ「成長途上の選手で、守備や走塁ではこうしてチームにマイナスを与えてしまう場面がある」と新井氏が指摘する通りだ。
リズムに乗れない山本は3回、4番のベン・ライス内野手にバックスクリーンへ12号2ランを浴び、さらに自分の暴投で失点を重ねた。
試合開始前の時点でメッツ・千賀滉大投手の1.60に次ぐリーグ2位の1.97であった防御率は、一気に同3位の2.39に跳ね上がってしまった。しかし、新井氏は「シーズンで全ての試合に勝つことはできませんし、山本も次回の登板には切り替えて臨むはずです。次へ向けて、首脳陣やチームメートに不安を与えるような投手ではないと思います」と太鼓判を押す。やられた次の試合こそ、エースの腕の見せどころだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)