史上9人目の100H&100Sも…謙虚すぎる男 燕・石山泰稚“復権”の裏に「ガラッと変えた」

ヤクルト・石山泰稚【写真:矢口亨】
ヤクルト・石山泰稚【写真:矢口亨】

「感情をコントロールできない感じがあったので、それじゃあ苦しいなって」

 ヤクルトの石山泰稚投手が、5月27日に行われた中日戦で今季10セーブ目を挙げ、「100セーブ&100ホールド」を達成した。長いプロ野球史で9人目の大記録も、当の本人は「全然です。過去8人もいらっしゃる、上には上がいるんですから。昨年もこの時期まではよかったので……」と相変わらず謙虚な姿勢を崩さない。

「あまり自分自身に期待していないというか。どうせもう落ちるだろうみたいな」と言って笑うが、決して投げやりなわけではない。たしかに、昨年も防御率0.66と抜群の成績で交流戦を迎えたが徐々に下降線をたどり、最終的には37試合で防御率4.35。8月29日には出場選手登録を外れ、その後出番が巡ってくることはなかった。

 これまでは当然ながら1軍で投げ続けること、結果を出し続けることに固執してやっていた。しかしその強すぎる思いは、自分を押しつぶしそうになっていることに気付いた。

「毎回ちゃんと準備してやりますし、それに結果がついてこないのもすごく悔しいですし、いろいろな葛藤はありました。自分の感情をコントロールできない感じがあったので、それじゃあ苦しいなって。だったらもう期待せずに、自分が楽な感じにやりたいなと思ったので、今年はそういう感じになりました」

近年は不振「考えて考えてわからなくなって。ずっときつかったですね」

 36歳でたどり着いた“新境地”。「もういつ落ちてもいいやくらいではないですけど、ここに投げてあそこに投げて、これでダメだったらもう、これが僕の全てです、これで無理だったら落としてくださいという感じなので、本当に結構受け入れてやっていますね」と迷いのない表情で語った。

 ヤマハからドラフト1位で入団して13年目。ルーキーイヤーから60試合に登板して、2018年には71登板で35セーブ、防御率2.08をマークするなど救援の一角として腕を振り続けた。しかし直近2年間は防御率4点台。「考えて考えてわからなくなって、ファームに落ちて整理してよくなるって感じったんです。ずっときつかったですね」と吐露した。

 いいことも悪いことも経験した右腕は今、「現段階では、個人としてはいい感じだと思います。自分の感情的には。今年ガラっと変えたので、こんなにも気持ちが楽なんだなって思います」と純粋に野球を楽しんでいるように見える。チームは借金17で最下位と苦しい戦いは続く。それでも最後のマウンドを守る石山は、“新たな自分”とともに復権の道を進んでいる。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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