長嶋茂雄さんが大谷翔平へ残した言葉 スーパースターは「負けるチームに生まれない」

長嶋茂雄氏(左)とドジャース・大谷翔平(写真はスクリーンショット)
長嶋茂雄氏(左)とドジャース・大谷翔平(写真はスクリーンショット)

2016年12月に初対面、スーパースター論を語り合う

 あんなに緊張している大谷翔平を見たのは、後にも先にも最後かもしれない。2016年12月8日。前職の報知新聞の日本ハム担当として、大谷と巨人・長嶋茂雄終身名誉監督の対談を担当させてもらった。

 日本ハム4年目の2016年、大谷は10勝&22本塁打など二刀流として10年ぶりの日本一へ牽引。唯一無二のスーパースターへ、その階段を駆け上がろうとしている頃だった。両者とも初対面。対談の中身は主にスーパースター論だったが、長嶋さんから大谷へ投げかけた言葉の中に強烈に印象に残っている言葉がある。

「エースや4番としてチームを優勝させることがスーパースターになる最初の条件。負けるチームにスーパースターは生まれない」

 エンゼルス時代はとにかく勝てなかったが、ドジャース移籍1年目の昨季は前人未到の「50本塁打&50盗塁」を達成。ワールドシリーズ制覇に貢献した。長嶋さんの求めるスーパースターへの第一歩と言えるが、同時に「3年やって初めて一人前」との声もかけられていた。昨年の世界一のシャンパンファイト。大谷は「あと9回しよう」とフリードマン編成本部長に話した。その言葉の裏には、どこかミスターの言葉があったのかもしれない。

 都内ホテルで行われた緊張感たっぷりの対談は53分で終了。ホッとしていたところ、長嶋さんから「大谷くん、1度食事はどうだい? キミも来なさい」と都内の高級中華店のランチに誘ってもらった。およそ1か月後。長嶋さんは「今日は上海蟹を食べるから」と言って、蟹の形をしたサファイアのブローチを左胸に。まだオシャレに興味のなかったと見られる大谷も、「(長嶋さんには)光が差しているというか……。あんなオーラを感じたことがなかったです」と目を輝かせていた。

 スーパースターとはなんぞや――。当時22歳の大谷は、対談中にこう語っていた。

「僕は自分が持っている最高のものを出したい。僕自身が出せる全力を打席でもマウンドでも。(グラウンド外では)基本的には変わらないですけど、ただ発言や態度は注意しています。まだまだ長嶋さんのように視座の高い所で物事は見えないですけど、ゆくゆくは必要なのかなと。選手としてだけではなく、どういうふうに見られるのか、どうすれば子どもたちの目標になれるのか。それが大事だと思っています」

 長嶋さんは「今すでに大谷くんには(スーパースターはどうあるべきかという)気持ちがある。持っている気持ちのままにやっていければいい。そうすれば自然に大谷くんらしいスーパースターの型ができる」と背中を押していた。ミスターとの時間や、その時にかけられた言葉。大谷にとって、かけがえのないものとなっているに違いない。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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