打点王争いトップも…鈴木誠也の“唯一の懸念” 元コーチが解説「時間がかかる傾向」

3日現在でナ・リーグトップの52打点をマークしている
カブスの鈴木誠也外野手は2日(日本時間3日)現在、今季ナ・リーグトップの52打点をマーク。この部門では昨季本塁打・打点2冠のドジャース・大谷翔平投手(39打点)にも13差をつけ、メジャー4年目にして円熟味を増している。かつて広島1軍打撃コーチ時代に鈴木を指導した経験のある野球評論家・新井宏昌氏が、感慨を込めて分析する。
今季の鈴木はリーグ最多の打点に加え、打率.269、14本塁打と安定した打撃を披露。ナ・リーグ西地区首位を走るドジャース同様、鈴木を擁するカブスも同中地区の首位を堅持しており、メジャーにおける存在感は着実に高まっている。
新井氏は現役時代にNPB通算2038安打を積み上げ、引退後もオリックス、ダイエー・ソフトバンク、広島のコーチを歴任。名伯楽の呼び声が高かった。鈴木に関しては2002年にカブスと契約した当初から、「日本からメジャーへ行った右打者の中で最高の成績を挙げる」と“予言”していた。
「というのも、私はコーチとしてNPB時代の田口壮、城島健司、井口資仁らにティー打撃のトスを上げてきました。彼らと身近に接した上で、鈴木が一番いい成績を挙げると確信したのです。鈴木は日本にいる時から、グラウンドの全方向を使って広角に打てて“逆方向”へも本塁打が出るのが持ち味でした。メジャーでもそのままのスタイルでやっていけると思いました」と説明する。
スタイルを変えずに成功したイチロー・松井、体を大きくした大谷・鈴木
新井氏は鈴木がドラフト2位で東京・二松学舎大付高から広島入りした2013年、自身も広島1軍打撃コーチに就任し、以降3年間務めた。1年目から1軍ベンチ入りを果たした若き日の鈴木を指導。「プロ入り当初の鈴木は、パワーはあるのに“ライナー打ち”で打球があまり上がらず、もったいないと感じていました。マツダスタジアムに毎日“早出”して、投手経験もある石井琢朗守備走塁コーチ(現DeNA野手コーチ)に投げてもらい、下半身を使ってバットにボールを乗せ、やや角度をつけてレフトスタンドへ放り込む練習を繰り返しました」と回顧する。鈴木がこうした下積みを経て、広島の主砲として毎年打率3割、30本前後の本塁打をマークするようになったのは、新井氏が2015年限りで退団した後のことだった。
鈴木は想像を超える成長も示している。新井氏は「メジャーリーグの日本人野手の歴史を振り返ると、順応に苦労する選手が多い中で、日本でやってきたことを特に変えずに成功したのが、イチロー(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)と松井秀喜(ヤンキースGM特別アドバイザー)。渡米後に体を大きくして、パワーもつけて成功したのが大谷翔平と鈴木誠也だと僕は見ています。鈴木はメジャーに行ってから打球速度もかなり上げています」と分類。「近年トレーニング方法が進化して、それを生かしているのが大谷と鈴木なのかもしれません」と考察する。
「あえて言えば、鈴木はいったんスランプに陥ると脱出に時間がかかる傾向があり、そこが少し心配」と新井氏。それでも「私の現役時代は、メジャーにいられないレベルの選手が日本に来て、打撃タイトルを獲って帰る時代でした。ところが大谷や鈴木は今、メジャーで日本人選手同士がタイトルを争うという、想像もできなかったことをやろうとしています」と感慨深げだ。シーズン終盤、鈴木vs大谷の一騎打ちの打点王争いとなる展開を期待している。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)