西武行きは「不安だった」 “粋な対応”に涙…MLBで覚醒の元助っ人、生かす日本での経験

コロナ禍で単身来日…メッツで活躍する剛腕
日本を去り、メジャーで躍動する元助っ人がいる。メッツのリード・ギャレット投手は今季27試合に登板して防御率0.68と抜群の成績をマーク。ドジャースタジアムのロッカーで話しかけると、にこやかな表情で答えてくれた。
プロ入りから5年目の2019年にメジャーデビューを果たすも、1か月半後にはDFA(事実上の戦力外)を経験。“働き場所”を求めて同年オフに西武と契約した。異国での挑戦は「不安だったよ」と振り返る。なかでも一番大変だったと語るのが、単身での来日だったことだ。当時はコロナ禍で、妻と息子は米国に残らざるを得なかった。
それでも160キロの剛速球を武器に、1年目から49試合に登板。16ホールドを挙げる活躍を見せた。「タフだったし、家族の為に結果を残さないといけなかった。でも、勉強になった。人としても成長する機会を得ることができたよ」。
単身での生活にはもちろん心細さもあった。2年目の6月20日。西武は「父の日」ということで、試合前に在籍していた助っ人たちへ、離れて暮らす家族からのメッセージを球場のビジョンに流した。妻と息子からのエールに、ビデオを見たギャレットは涙。その瞬間のことを振り返ってもらうと、「(当時は)とにかく寂しい。寂しい。悲しかったし、辛かったから、あの光景を見られてよかった。私たちの為に動画を用意してくれたことは大きな意味をもつよ」と目を潤ませた。
ロッカーで声をかける直前、ギャレットは隣の選手にスマホの画面を見せ、そこには息子の写真が映っていた。こぼれたその優しい笑みに、深い家族への思いが垣間見えた。
メジャー復帰後はナショナルズ、タイガースを経て、2023年途中からメッツに加入。昨年53試合に登板すると、今季も好投を見せている。「2023年の終盤に(投球の)修正を行った結果、投げやすくなったんだ」。3日(同4日)の試合では、1点リードの8回に登板して1死二、三塁のピンチを招いたが、連続三振を奪って雄叫びを挙げた。
「日本で学んだことはたくさんあるよ。自分について多くのことを知ることができた。困難な時にどう立ち向かえばいいか。野球についても多く知ることができた。いい意味で、ここと日本では野球が違うからね」。異国での経験を生かし、メジャーで屈指のリリーバーとなっている。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)