阪神主砲に「やり返してこいと」 専門家が注目した起用…見えた“復活の兆し”

前日はバックスクリーンへソロを浴び、そのまま0-1で敗れていた
■日本ハム 5ー4 阪神(4日・エスコンフィールド)
長丁場のペナントレースでは時折、痛恨の一発を浴びた投手を翌日すぐ、同じ打者のところであえて起用することがある。4日に本拠地エスコンフィールドで行われた阪神戦での、日本ハムがそれだった。32歳のリリーバー右腕・玉井大翔投手を、前日(3日)バックスクリーン弾を浴びた大山悠輔内野手にぶつけた。
5-2とリードした6回の守備。1死一塁で相手の5番・大山を打席に迎える。大山には前日にバックスクリーンへ3号ソロ、さらにこの日も4回に左翼2階席へ4号ソロを打たれていた。日本ハムはここで先発の加藤貴之投手に降板を命じ、リリーフに玉井を指名。前日に0-0の6回、大山に均衡を破るソロアーチを浴びた当人が玉井で、チームはそのまま0-1で敗れていた。
現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏は「玉井がブルペンで肩をつくっていた時から、『大山にぶつけるのだろう』と予想していましたよ」という。「やり返して来い、ということ。首脳陣としては、玉井という投手の重要度が高ければ高いほど、すぐに行かせて嫌なイメージを払拭したかったはずです」と解説する。
リベンジを期す玉井は、初球から3球連続で140キロ台中盤のシュートを投じ、見逃しストライク、ファウル、ボールでカウント1-2と追い込んだ。このシュートこそ、玉井の持ち味だ。野口氏は「前日はそのシュートを投げる前に、2球目のストレートを本塁打されていました。リリーフ投手は一番自信のある球種をどんどん投げ込んでいくものです。シュートを出し惜しみして打たれた玉井は、悔いが残っていたことでしょう」と玉井の心境を思いやる。
昨季は腰痛でプロ入り後初めて1軍登板なしも、復活し防御率1.29
追い込んだ玉井は4球目に外角のボールゾーンへカットボールを投じ、カウントは2-2。勝負の5球目を迎えた。伏見寅威捕手は内角に構え、誰もが勝負球にシュートだと予想。ところが、投じられたのは外角への124キロのスライダーだった。大山のバットが空を切り三振。野口氏は「いやいや、伏見が要求したのはシュートで、サインミスでスライダーを投げてしまったのだと思います。伏見の捕り方は、サインミスの時の捕り方でした。もしサイン通りにシュートを投げていたら、どういう結果になっていたかはわかりませんが、大山にとっては予想していなかったボールが来たと思います」と断言する。
玉井は続く糸原健斗内野手も中飛に仕留め降板。今季は10試合に登板し6ホールド、防御率1.29と結果を残している。昨季は腰痛でプロ入り後初めて1軍登板なしに終わったが、9年目の今季は見事に復活を果たしている。
「近年の投手はシュートと言っても、ツーシーム系の曲がりながら落ちる球が多いのですが、玉井のシュートは昔ながらの、真横に食い込んで相手打者のバットをへし折る素晴らしいシュートです」と野口氏。「右打者が一番嫌がる球です。日本ハムの首脳陣が対右打者の切り札として、ショートリリーフで玉井を使いたくなるのもわかります」とうなずいた。
就任4年目の新庄監督の下、パ・リーグ首位に立っている日本ハム。玉井は今後の優勝争いで、重要なキーマンになりそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)
