紅林弘太郎、進化のカギ握る“独創的な練習” 父親になっても変わらぬ取り組み「下位は悔しい」

オリックス・紅林弘太郎【写真:栗木一考】
オリックス・紅林弘太郎【写真:栗木一考】

6年目を迎えた紅林が目指す飛躍「アピールしなければいけない立場」

 子どもが誕生し、ナインから“パパ林”とも呼ばれているオリックスの紅林弘太郎内野手が、連日の早出特打で打撃を磨いている。

「若いので1日寝たら疲れはとれます。今のうちに練習をやっておかないと、年齢を重ねたらしんどいと思うので、野球にかける時間をどんどん増やしていきたい」。いつものように試合後、球場地下駐車場に最後に現れた紅林が、貪欲な練習への取り組みを語った。

 紅林は、駿河総合高(静岡)から長打力を秘めた大型遊撃手として2019年ドラフト2位で入団。2年目に開幕スタメンを果たし、10代の選手として球団初となる2桁本塁打(10本)を放った。強肩を生かした広い守備範囲でもチームに貢献。2021年から定位置を確保し、同期入団のドラフト1位・宮城大弥投手との「みやくれ」コンビで、オリックスの“顔”としても存在感を示している。

 元々、練習熱心。春季キャンプでは居残り練習の常連で、宿舎に帰るのは日が落ちてから。今季はシーズンに入ってからの早出特打に、腰痛でベンチを外れた以降は連日参加している。

 練習方法にも工夫を凝らす。打撃の順番を待つ間も休まず、ティー打撃やバックネットに向かってロングティーなどを繰り返す。トスバッティングでは、バットを持たず、投げてもらった球を素手でキャッチする。また、ある時は、両手で持ったヘルメットを揺りかごのように体の前で左右に揺らしてタイミングを計る。

「ボールの見方ですね。目と体の動き方を意識してやっています。(揺りかごは)肘を柔らかく使えるようにするものです」と紅林は狙いを説明する。4月初旬に4割以上あった打率は2割8分前後に落ちたものの、首位打者に立つ太田椋内野手が「あの間の取り方を参考にしていました」というほど、紅林の打撃は安定している。

 今季から指導にあたる川島慶三・1軍打撃コーチは「いろいろ工夫してよく練習をやっています。彼のやりたいこともあるでしょうから、それを見守っています。その方が気持ちよく野球ができる選手ですから、方向性だけ間違わないようにだけ見ていて、僕からは言いません。やることをコロコロ変えますが、まだ若いので自分で見つけていくのはいいことです」と、紅林の自主性を尊重し温かく見守る。

「去年がダメだったんで。やるのは自分なので、(工夫して)やろうと思っています。上位を打ちたいと思っているので下位は悔しい」と早出特打や独創的な打撃練習の理由を語る。結婚して子どもが誕生し、責任も守るべき家族も増えた。「僕はまだまだアピールしなければいけない立場」と言うあたりに“覚悟”を感じた。

 川島コーチから紅林への注文は「20本塁打」だという。「今年は20本打てと言ってるんです。お前の体で、なんで打てないんだと」。今年、紅林は「ヘッドを効かす」をテーマに掲げている。「バットをちゃんと扱えれば、イメージ通りに体を動かせるようになると思います」と意気込む。5月中旬以降は、3番や5番など、主軸を打たせてもらえるようになり、本塁打は4本と昨年の2本を早くも上回った。

「首脳陣の信頼を勝ち取って、ずっと上位を打ちたい」。6年目にさらなる飛躍を誓う。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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