宇田川優希が掲げた“ダルビッシュ超え” リハビリ中に見つけた野球の「趣味」

左投げをするオリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】
左投げをするオリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】

WBCで声をかけてくれたダルビッシュの存在

 趣味も、やっぱり「野球」だった。オリックスの宇田川優希投手が、トミー・ジョン(TJ)手術中のリハビリ期間中の趣味に「左投げ習得」を挙げ、練習に取り組んでいる。

 「地味で辛いリハビリですから、何か趣味を見つけて楽しもうと思って始めたのが、左投げでした」。生真面目な性格そのままに、宇田川が真顔で切り出した。

 宇田川は埼玉県出身。八潮高、仙台大から2020年育成ドラフト3位で入団した。150キロ後半のストレートと鋭く落ちるフォークを武器に、2年目に支配下選手に昇格すると、中継ぎ、抑えとして19試合に登板し2勝1敗、防御率0.81でチームのリーグ優勝に貢献。日本シリーズでも4試合に登板、1勝2ホールドと活躍し、2023年のWBC日本代表に選出された。

 しかし、2024年9月のソフトバンク戦での緊急登板の際に右肘を痛め、「右肘浅指屈筋の筋損傷」と診断されていた。オフには快方に向かったが、今春のキャンプでは満足のいく投球ができず、3月11日にトミー・ジョン(TJ)手術を受けた。

 手術から2か月。肘への負担から禁じられていたランニングを始められるようになった。外野の右翼から左翼のポール間を、7割の出力で往復。ウエートトレーニングも順調だ。手術前まで14キロを持っていたダンベルを7キロに落として右腕に負荷をかけられるようにもなった。

 新たな取り組みが、左投げだ。2軍が遠征中の残留組の練習に交じり、左腕でキャッチボールをするのが日課になった。ただし、トレーニングの一環として始めたものではなかった。

「趣味をずっと見つけたかったんですが、釣りもコウセイ(吉田輝星投手)と行ってもすぐに飽きて。リハビリを忘れさせてくれるものを探したんですが、見つかんなくて。ダルさん(ダルビッシュ有投手)が左でも投げているのを思い出しました」と宇田川。

 ダルビッシュが、体の左右のバランスをよくするために左投げを練習に取り入れていたことを知っており、「やってみたら段々、投げられるようになって面白くなってきました」と宇田川。

 ダルビッシュがTJ手術経験者であることも、左投げを後押しした。レンジャーズ時代の2015年3月に手術を受けたダルビッシュは、リハビリ中に最速79マイル(約127キロ)を記録したという。

 初めて出会ったWBCの日本代表で、チームに溶け込めるように声を掛けてもらったことで、宇田川は今もダルビッシュを兄のように慕う。時差も考え、必要最小限の連絡しか取らないが、TJ手術を受けることだけは報告した。「130キロは出したいですね」。左投げでダルビッシュ越えを目指す。

○北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者1期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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