元指揮官から与えられた“仕事” 西武・滝澤が胸に秘める使命「この体でもできる」

西武・滝澤夏央【写真:小池義弘】
西武・滝澤夏央【写真:小池義弘】

阪神・才木、桐敷から3打数3安打1四球「積極的にバットを振れている」

■西武 4ー2 阪神(10日・ベルーナドーム)

「この体で生まれてプロとして野球をやっている以上、小柄な子どもたちに『この体でもできる』というところを見せることが自分の使命だと思っています」。現在NPB“最小兵”の164センチ、西武・滝澤夏央内野手はそう言い切る。

 レギュラーの座を固めつつある。10日に本拠地ベルーナドームで行われた阪神戦では「2番・二塁」でスタメン出場。3打数3安打1四球の活躍で、チームが逆転勝ちを収め、連敗を「4」で止める原動力となった。

 阪神のエース・才木浩人投手に対し、初回1死の第1打席では、初球の153キロの速球を中前にはじき返した。4回先頭の第2打席では、粘った末に9球目を選び四球で出塁。6回無死一塁の第3打席では、再び才木の初球の149キロ速球を捉え、右前打を放った。「ボールを見るだけでなく、初球から積極的にバットを振れているところがいいのかなと思います」と自己分析する通り、思い切りのよさが光った。

 2点ビハインドで迎えた8回には、阪神3番手の左腕・桐敷拓馬投手に対し、無死一塁で3球目のスライダーを右前打。これが1イニング5安打4得点の逆転劇につながった。西口文也監督は「(滝澤が)いい場面で、いいつなぎ役を果たしてくれました」と目を細めた。

 まだプロ4年目の21歳。2021年に育成ドラフト2位で新潟・関根学園高から入団すると、抜群の走力と遊撃守備で注目され、1年目の5月には早々と支配下登録、即1軍デビューを果たした。自身初の開幕1軍スタートとなった今季は、攻守に成長のあとがうかがえ、41試合出場で打率.276、6盗塁、リーグ最多の8犠打(10日現在)をマークしている。

プロ入り当時の辻発彦監督からかけられた言葉を今も胸に

 源田壮亮内野手が右太ももを痛め4月19日に出場選手登録を抹消されると、代役としてスタメン遊撃に定着し、西口監督が「源田が帰ってきても、ショートを守れるかわかりません」と口にするほどの輝きを放った。源田復帰後には「2番・二塁」のポジションに定着。滝澤自身も5月22日に「左ハムストリングスの筋損傷」で出場選手登録を抹消されたが、今月3日に1軍復帰し、「怪我をした時は悔しかったですが、その分、こうして野球ができていることが幸せですし、楽しめています」と充実感を漂わせている。

 仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチは「今はバットの出方がいい。非力なところは否めないので、打ち方を含めて、いろいろやっているところです」と言う。滝澤は「いっぱいいっぱいにならず、頭の中で考えを整理しながら打席に入るようにしていて、今はいい結果につながっています。少しでも迷いがある時には、仁志さんに聞くようにしています」とうなずく。

 一方でプロ入り当時の監督、辻発彦氏から「その体でもできるというところを見せることが、おまえの仕事だぞ」とかけられた言葉を、今も胸に置いている。「夢や希望を与えられる選手になりたいです」。ひたむきに打ち、走り、守り続ける。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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