西武22歳を支える経験「高校時代に鍛えられた」 不振脱却へ…“悲劇の世代”が見せる成長

10日の阪神戦で決勝打を放った西武・山村崇嘉【写真:小林靖】
10日の阪神戦で決勝打を放った西武・山村崇嘉【写真:小林靖】

今月3日に今季1軍初昇格、1死満塁で右前へ決勝適時打

■西武 4ー2 阪神(10日・ベルーナドーム)

 西武は10日、本拠地ベルーナドームで行われた阪神戦で8回に2点ビハインドをひっくり返し、4-2の逆転勝ち。連敗を今季最長タイの「4」で止めた。決勝打を放ったのは、今月3日に今季1軍初昇格した山村崇嘉内野手だった。

 チーム打率.212という極度の貧打にあえぎ、ずるずると黒星を重ねて最下位に終わった昨季とはひと味違う。西武打線は0-2とリードされて迎えた8回、阪神3番手の左腕・桐敷拓馬投手に襲い掛かった。1、2番の連打などで1死一、二塁とし、4番タイラー・ネビン外野手の適時二塁打でまず1点。代打・外崎修汰内野手の四球、源田壮亮内野手の同点左前適時打を経て、1死満塁で左打席に入ったのが「7番・三塁」でスタメン出場していた山村だ。

 カウント0-1から内角のツーシームにやや詰まらされながら、前進守備の一、二塁間をしぶとく破り、右前に決勝打を運んだ。「“左対左”はそれほど苦手にしていませんし、源田さんの同点タイムリーで気持ちが楽になっていて、あとは思い切りいくだけでした」と振り返る山村。「僕はどちらかというと『ここで打ったらヒーローだ』と思えるタイプで、『打てなかったらどうしよう』とは思わない。チャンスに燃えます」。3日に亡くなった“燃える男”こと長嶋茂雄氏ばりの勝負強さを見せ、本拠地では自身初のお立ち台に上がった。

 5年目22歳のスラッガー。昨季は自己最多の58試合に出場し、打率.219、2本塁打23打点、得点圏打率.311をマークし、チーム最多タイの32試合で4番を務めた。ところが今季はキャンプ、オープン戦で振るわず、開幕2軍スタート。イースタン・リーグでも打率.234、3本塁打18打点とくずぶっていた。大活躍していたドラフト2位ルーキー・渡部聖弥外野手が怪我で戦列を離れたこともあって、今月3日にようやく今季1軍初昇格のチャンスを得た。

東海大相模高3年の春、出場が決まっていた選抜大会が中止

「2軍ではモチベーションの維持が難しかったです」と振り返るが、身に覚えのある状況でもあった。「僕はコロナで高校3年の時に全国大会がなかった世代なので、そこで鍛えられたというか、諦めずにやっていけば必ずいいことが起こると前向きに考えるようにしています」と述懐する。

 神奈川・東海大相模高3年だった2020年の春、選抜高校野球大会出場が決まっていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて中止。夏の甲子園大会の中止も決まり、“悲劇の世代”とも呼ばれる。8月には選抜に出場するはずだった32校が甲子園へ招かれ、各校1試合の交流試合が開催された。山村は「2番・遊撃」でスタメン出場し、西武に同期入団しチームメートとなる仲三河優太外野手も、相手の大阪桐蔭高で代打出場し左前打を放っていた。

「活動自粛となり家から一歩も出られない時期があって、当時の僕らにはモチベーションが何もありませんでした。実際には、あの夏の大会時期の感染者数は少なくて、当時の同級生たちとよく『やれたよな』と話します」と明かす。それでも「僕にはプロ野球選手になるという目標があったので、まだしも救われました。結果的に、夏の全国大会がなかった方がよかったのかもしれないと思うくらい、上位で指名(2020年ドラフト3位)していただきましたし……」と切り替えている。

 西武ではレギュラーの座や1軍枠をめぐり、若手間の争いが激しい。山村の真価が問われるのはこれからである。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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