山本由伸に立ちはだかる“10人目の敵” 伸びない勝ち星…専門家が指摘する負のスパイラル

ドジャース・山本由伸【写真:ロイター】
ドジャース・山本由伸【写真:ロイター】

6勝目以降4試合足踏み…山本の現状を新井宏昌氏が解説

 勝利の鍵は、単に相手打線を封じることだけではない。最近4試合、白星から遠ざかっているドジャースの山本由伸投手。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも造詣が深い野球評論家・新井宏昌氏が山本の現状を解説した。

「ボール自体は悪くないです。彼はいろんな球種を両コーナーのストライクゾーンのギリギリに投げ込むタイプ。最近の失点はアンパイアの判定一つだと見ています。厳しいコースを突いているんですが、微妙なところがボールと判定されて四球になったり、次のストライクを取りにいったところを痛打されているのが目につきます」

 5月26日(日本時間27日)のガーディアンズ戦で6勝目を挙げて以降、4試合足踏みが続く。1日(同2日)のヤンキース戦は4回途中4失点KO。7日(同8日)のカージナルス戦は6回無失点も味方の援護がなく白星をつかめなかった。13日(同14日)のジャイアンツ戦では3四球で満塁のピンチを招き痛恨の被弾。まさに新井氏が指摘したケースである。

 この時、打たれたのが決め球のスプリット。新井氏は「スプリットは三振も取れるけど、長打を食らうことも多く、紙一重なんです」と説明する。「山本のスプリットは野茂英雄や“大魔神”の佐々木主浩のような、追い込んでから三振を取る落差の大きなフォークとは違います。初球にも使うしカウントを取る時にも投げる。ストライクゾーンにいって長打を食らうことも出てきます」。

 今季は開幕投手を務め、5月上旬まで0点台だった防御率は気付けば2.76まで悪化。「フォーシームも155、156キロ出てますし、スプリットも悪くない。でも四球が絡んでホームランを打たれると、なかなか勝てない。ヒット数自体はそれほど多くない中での失点です」。流れが悪い状況に陥り、前回19日(同20日)のパドレス戦は6回1/3を3失点のクオリティスタート(6回自責点3以下)も援護に恵まれず6敗目を喫した。

 新井氏はメジャーリーグの審判の判定にも言及。「試合を見ていて、同じコースでも手を上げるアンパイアと上げないアンパイアがいます。ボールになると次に投げる球に影響が出ます。判定一つでカウントを悪くしたり、自分を苦しめることになる。アンパイアを味方につけるというより、アンパイア次第という状況です」。持ち味である抜群の制球力の前に立ちはだかる審判の壁。そんな状況で打開策はあるのか。

「(捕手の)スミスがハイボールを要求する時がありますが、甘くなっても低めに集めることが重要だと思います。コーナーを突くより、甘めでも低め。それならホームランの可能性は低く、ヒットでもゴロの当たりになる。彼らしいピッチングは続けているので、困ったら低めを徹底できれば、いい方向にいくと思います」。審判の判定は投手には変えられない。自分でコントロールできる部分に集中して注力するのが最善の道となりそうである。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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