“神ドラフト”蚊帳の外で「見返したい」 阪神戦力外→DeNA岩田将貴が5年目で掴んだ1軍デビュー

DeNA・岩田将貴【写真:古川剛伊】
DeNA・岩田将貴【写真:古川剛伊】

1死満塁の大ピンチで初登板…押し出し死球&四球など1/3回12球で降板

 初めて名前がコールされたのは、大ピンチの場面だった。本拠地の雰囲気は「もう、本当にすごかったです」。今季DeNAに加入した岩田将貴投手が、6月20日のロッテ戦(横浜)で待望の1軍デビューを果たした。阪神を戦力外になり、新天地でようやく立ったスタートライン。27歳の変則左腕は「5年かかったので、長かったですね」とこれまでの道のりを思い出し感慨に浸った。

 1-4の9回から、こちらもプロ初登板となったハンセル・マルセリーノ投手がマウンドに上った。しかし1死一、二塁からネフタリ・ソト内野手に危険球を与えて退場に。満塁という大ピンチでコールされたのが岩田だった。

「すごいところでしたけど、そこで使ってくれた監督には感謝しかないです。マウンドに上がったら自分を落ち着かせるために後ろを一度後ろを向こうとかいろいろ考えていたんですけど、それを忘れるくらい緊張してしまいました。結果は出ませんでしたけどいい経験をさせてもらったので活かせればと思います」

 1死満塁から藤原恭大外野手を遊ゴロに打ち取ったが、寺地隆成捕手に押し出し死球、続く池田来翔内野手には押し出し四球。ここで颯投手に交代となった。1/3回、12球は内容的に納得がいくものではない。それでも「5年かかりましたし、前のチームではその場に立つこともできなかったので、そこは結果抜きにしてもちょっとは成長できたのかなと思います」と喜びを口にした。

デビュー後には阪神時代の同期から祝福LINE「仲が良かったのでうれしい」

 2020年育成ドラフト1位で阪神に入団した。同期の8人は、1位から佐藤輝明内野手、伊藤将司投手、佐藤蓮投手、榮枝裕貴捕手、村上頌樹投手、中野拓夢内野手、高寺望夢内野手、石井大智投手と1軍で活躍している選手がズラリ。“神ドラフト”と称されることも多かった。しかし唯一の育成だった岩田は、在籍した4年間で支配下に上がることもできなかった。

「同期がすごく活躍していて、僕だけ育成で入って記事とかでそのドラフトの中に僕の名前が入っていなかったりもあったので。見返してやろうという気持ちもありましたけど、あまりにもみんなすごかったので、同期なので応援しかなかったです」。阪神時代の同期同学年のグループLINEには、岩田が初登板を果たすと「おめでとう」という祝福の連絡が届いたという。「仲が良かったので、うれしいです」と目尻を下げた。

 これまでの月日を振り返り「前のチームでは打たれる悔しさしかなかったので……。まあでも、長かったですけど短かったとも言えるし、いろいろな感情があります」と言葉を紡ぐ。「5年かかりましたけど、親とか応援してくれる人たちにまず初登板を見せられたのがいいことだと思います」と周囲に感謝した。

 28日の巨人戦(東京ドーム)では0-5の6回1死三塁からトレバー・バウアー投手の後を受け、得点を許さず役目を果たした。現在1軍にいる左の救援は岩田ただ一人で、貴重な役割を担っていることは疑いようがない。「しっかりアピールしてアウトを1つずつ取って、その結果が1軍定着につながっていければいいと思います」。雌伏のときを経て、“ベイスターズの岩田”としての野球人生を明るく照らしていく。

○著者プロフィール
町田利衣(まちだ・りえ)
東京都生まれ。慶大を卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。北海道総局で日本ハム、東京本社スポーツ部でヤクルト、ロッテ、DeNAなどを担当。2021年10月からFull-Count編集部に所属。

(町田利衣 / Rie Machida)

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