「もうやるしかない」1軍昇格も自信なし 宗佑磨が決めた覚悟と気迫の復活劇

オリックス・宗佑磨【写真:北野正樹】
オリックス・宗佑磨【写真:北野正樹】

序盤の不調で5月初めに2軍降格→6月中旬に昇格

 オリックスの宗佑磨内野手が、1軍再昇格後に打撃でチームに貢献している。

「背水の陣です。気合でしょ。それしかないですよ、技術ではありません」。交流戦を終えた宗が、静かに打撃好調の秘密を明かした。

 11年目の今季、オープン戦序盤に好調な打撃を維持。開幕カードの2試合でも3安打を放ったが、打率.200で5月1日に1軍選手登録を抹消された。内野手のけがで6月13日の巨人戦(京セラドーム)から再昇格すると、3戦目に5打数4安打、3打点の活躍でお立ち台に登った。その試合を含めた7試合で32打数11安打、7打点と、交流戦2位に大きく貢献した。

 1軍昇格の連絡は、合流前夜だった。「遅い時間だったので、何かやらかしたかと心配しました」と宗。それほど、再昇格は意外だったという。ファームでの約45日間、好不調を繰り返し、自信を持って上がれる状態ではなかったからだ。

「回復はしていなかったんです。いい時もあるんですが、まだかなあという感じ。絶好調ではないという状態で声がかかったんで、ここはもうやるしかないと。好調不調とか言ってる場合じゃありませんから」と心情を吐露する宗。

 それでも、1軍から声がかかるのは、チーム事情もさることながら、守備も含めた高い貢献度を評価されたためだろう。首脳陣の期待と、自身の打撃の状態を考えると、「もうやるしかない」と覚悟を決めるしかなかった。

 しかし、再昇格後の2試合で7打数無安打。「うわっと思ったんですが、腹をくくっていくしかないと思いました」と臨んだ3試合目だった。

 好調の要因について、宗は「技術ではありません。技術なんて、みんなほぼ一緒です。そこで(力を)発揮できるかできないかは、気持ちなんです。そこで負けてしまったら、もうおしまいです」

 ファームで若手と汗を流した期間、どのように自らを鼓舞したのかを聞くと「暑い中、頑張りました。鼓舞するも何も、プロだから当たり前ですよ。どんな状況であれ、やり続けなければいけない。それだけです」と言い切った。

「まだまだ安心はできません。他の人を気にしている余裕はないんで、自分のことで必死です。気を抜けないのは当たり前です。もう、気合っすね、マジで。顔、違うっすよ絶対に。今までと明らかに」。覚悟を決めた男の「顔」がそこにあった。

〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

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