山本由伸からのサイン色紙を胸に 「報告する」育成出身左腕・佐藤一磨が燃やす闘志

昨年プロ初勝利も…遠い2勝目
オリックスの育成出身・佐藤一磨投手が、プロ2勝目に意欲をみせている。2つ目の白星をつかめば、メジャー挑戦前から尊敬しているドジャース・山本由伸投手に胸を張って報告するつもりだ。
「恐れ多くて、連絡なんて取らせていただいていません。2勝目を挙げたら報告するつもりです」。佐藤が恐縮したように背筋を伸ばした。
佐藤は、横浜隼人高から2019年育成ドラフト1位で入団。190センチの長身を生かしたストレート、フォーク、カーブ、チェンジアップが武器の左腕で、プロ5年目の2024年6月に支配下選手登録を掴んだ。プロ初登板初先発となった同年6月9日の巨人戦(東京ドーム)で初勝利を挙げることができた。
しかし、2勝目は遠い。その後の4試合(先発2試合)で勝ち星を挙げることはできず、1勝1敗(5試合)、防御率5.40でシーズンを終えた。
「5年間、目指していた支配下になって、1軍で登板し初勝利も挙げました。でも1軍のレベルの中では、本当に力不足だなと思いました」。力のなさを痛感し、常に1軍のマウンドに立ったつもりで練習に取り組み、試合に臨んできたという。
練習への取り組みなどで尊敬し、参考にするのがメジャーで活躍する山本だ。「同期の宮城(大弥投手)もそうなんですが、日本一のピッチャーがほかの誰より練習されるんです。その姿をみると、もっと頑張らなくてはいけないと、奮い立つんです」
メジャーでの活躍も刺激になる。「すごいというレベルじゃないです。すごいというだけでヨシノブさんに失礼ですよ」と言いつつ、「ヨシノブさんが簡単に本塁打を許すメジャーって、どういう世界なんだろうとすごく思います。日本でシーズン通して2、3本ですよ」。山本を通してメジャーの世界のレベルも知ることができた。
佐藤は、下半身のコンディション不良で4月下旬から約1か月間、マウンドから離れた。1軍昇格に向け焦る気持ちもあったが、「5年間、フルに投げてきましたから、ちょっと休憩という感じで」と感情をコントロールすることもできた。
復帰後の公式戦4試合で、防御率は0.53。先発した2試合では、11イニングで被安打7、9奪三振、失点1と安定した投球で、1軍昇格をアピールした。「僕はあまり先を見るとうまくいかないタイプなんで、まずは1軍で2勝目をすることしか考えていません。ファームではしっかりと抑えてきたので、自信は持っていいと思っています」と胸を張る。
「ヨシノブさんからは、初勝利を挙げた直後に『おめでとう。球速が上がったね』とメッセージをいただきました。映像を見てくださっているのがうれしかったですね」と感謝する。
佐藤の自宅玄関には、メジャー移籍直前に山本からもらったサイン色紙が飾ってある。「一磨へ 頑張れよ!!」。思いを込めて書いてくれた山本に恥じない投手を目指し、自らを奮い立たせる。
〇北野正樹(きたの・まさき)大阪府生まれ。読売新聞大阪本社を経て、2020年12月からフリーランス。プロ野球・南海、阪急、巨人、阪神のほか、アマチュア野球やバレーボールなどを担当。1989年シーズンから発足したオリックスの担当記者一期生。関西運動記者クラブ会友。2023年12月からFull-Count編集部の「オリックス取材班」へ。
(北野正樹 / Masaki Kitano)
