幻となった二刀流の究極体 大谷翔平が来季へ残した“宿題”「いけと言われた時に」

大谷の救援登板、外野手出場はポストシーズンで実現せず
今年も毎日がサプライズだった。ドジャース・大谷翔平投手は今年のポストシーズン(PS)で、とにかく記憶に残る大活躍が目立った。PS二刀流デビューとなったフィリーズとの地区シリーズ第1戦では6回9奪三振3失点で初勝利。ブルワーズとのリーグ優勝決定シリーズ第4戦は3本塁打&10奪三振で伝説の日となった。
ブルージェイズとのワールドシリーズ(WS)はなんと言っても第3戦。延長18回の死闘となる中で4打席連続敬遠を含む9出塁をマークした。PS史上初の記録。ロバーツ監督は「クレイジーな期待を実現する。比較対象になれる人はいない」と語っていたが、この記録が破られることはもうないだろう。
WS第7戦では中3日で先発登板。ビシェットの3ランで3回途中3失点だったが、1番打者&先発投手として世界一連覇へフル回転した。一方で、幻となったのがリリーフ登板と外野手起用だ。現行ルールでは指名打者→救援登板→指名打者の起用は認められていないため、実現のハードルは高い。それでも、外野手用グラブを用意するなど、大谷本人からはやる気が十分に伝わってきた。
WS第6戦の前日。大谷の外野手起用について、ロバーツ監督は「全てを話し合う。状況に応じて最善を探る。あらゆる選択肢を議論する」と語った。もう1敗もできない窮地。1か月ほど前は「外野で1球も捕っていないのに」と笑い飛ばしていたが、大きな“方針転換”だった。
このポストシーズン。報道陣からリリーフや外野手の起用について問われる度に、大谷は「いけと言われた時にいつでもいけるように準備したい」と繰り返してきた。メジャー公式戦でのリリーフ登板はなく、外野手での出場は2021年から遠ざかっているのにも関わらずだ。
世界一のシャンパンファイトは、敵地ロジャースセンターの打撃ケージで行われた。大谷は「さみぃ~」と言いながら、その後にMVP受賞の記者会見が予定されていた山本由伸と共に早々にクラブハウスへ。シャワー、中継局のインタビューをこなした後、宿舎へ向かう最初のチームバスへ向かった。NPB時代は「フィジカル強化に終わりはない」が口癖だった。祝杯も“ほどほど”に。来季への闘いはもう始まっているということか。
2026年は開幕から投打の二刀流全開となる。1番打者&先発投手だけでなく、メジャー初のリリーフ登板や5年ぶりの外野手出場。チームを勝たせるためなら何でもやる、そんな二刀流の究極体も期待したい。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)