お金を使わない球団に罰則? 深刻化するMLB球団の格差問題…現地で提唱される“解決策”

  • 笹田大介 2026.02.27
  • MLB
2022年の新労使協定合意を発表後、会場を後にするマンフレッド・コミッショナー【写真:Aflo】2022年の新労使協定合意を発表後、会場を後にするマンフレッド・コミッショナー【写真:Aflo】

2022年シーズンはロックアウトにより開幕が遅れた過去

 MLBの春季キャンプが本格化し、レギュラーシーズンの開幕が近づいているが、現行のMLB労使協定(CBA)は最終年度を迎えており、12月1日に期限切れとなる。2022年シーズン開幕前に承認された5年契約のCBAは、MLB選手会とMLBオーナー間の紛争による99日間の選手ロックアウトを経て締結されたものだ。当時はスプリングトレーニングが短縮され、レギュラーシーズンの開幕が遅れたが、次期協定の交渉はさらに紛糾する見通しとなっている。

 アナリストは、球団間の年俸総額格差拡大を理由に、MLBオーナーの大半が「サラリーキャップ(年俸総額制限)」の導入を強く求めるだろうと予測している。これに対し、選手側は歴史的にあらゆる形態のサラリーキャップに反対してきた。選手の収入獲得力を制限するからだ。

 これは第3代選手会長を務めたマービン・ミラー氏が、1968年に初めてCBAの交渉をして以来、MLB選手会が数十年にわたり懸命に勝ち取ってきた権利である。こうした対立から、12月1日の期限までに新契約が成立せず、21-22年と同様のロックアウトが発生するのではないかと懸念する声が多い。となると、新CBA交渉が合意に達するまで、事実上フリーエージェント(FA)市場とトレードが停止されることになる。

 しかし一方で、より創造的な解決策を講じることで、ロックアウトや1995年以来となるストライキを回避することが可能だと考える意見もある。米メディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者はポッドキャスト番組「ファウル・テリトリー」に出演し、「ストレートでハードなサラリーキャップ」に代わる代替案についての見解を述べた。

 ローゼンタール記者は議論の冒頭で、MLBのビジネスが「非常に健全な状態にある」と指摘した。

「2024年の収益はMLB史上最高121億ドル(約1兆8708億円)を記録し、2025年分は最終数値が確定次第さらなる増加が見込まれる。視聴者数の記録を更新した素晴らしいワールドシリーズも実現し、ビジネスの急成長でピークを迎えている今は、労使紛争を起こす最悪のタイミングだ。だが、オーナー側がサラリーキャップ導入を迫ることで紛争が引き起こされる可能性が高い」

 そして、収益格差問題への代替案を提示した。ドジャースのような上位球団の年俸総額が4億ドル(約618億4400万円)を超える一方、下位20球団の総額はその半分以下に留まる現状を指摘したローゼンタール記者が提案した解決策には、小規模市場チームへの相対的収益分配の拡大、また最低給与基準額を下回った下位チームに罰則を課す、「ハードフロア」とは対照的な「ソフトフロア」の導入で、収益分配拡大のための全国放送試合数を増加することなどが含まれる。

年俸総額が4億ドルを超えるドジャース【写真:荒川祐史】年俸総額が4億ドルを超えるドジャース【写真:荒川祐史】

支出「最下層」の球団からドラフト指名権や収益分配金を剥奪?

 1つ目の提案は、現状の格差を踏まえ、下位市場チームは単純に収益分配利益のより大きな割合を受け取るべきだという主張だ。2つ目は、支出が「最下層」にあるマーリンズ、アスレチックス、レイズ、ホワイトソックス、パイレーツなどに対し、資金を投入しない責任を問うため、ドラフト指名権や収益分配金の剥奪を課すというアイデア。これはぜいたく税と正反対の考え方で、MLBコミッショナーのロブ・マンフレッド氏も提唱しており、地域限定(ローカル)放送を減らし全国放送の可視性を高める狙いだと主張している。

 現在のMLBテレビ契約は危機的状況にある。視聴者がケーブル契約を解約してストリーミングサービスに移行するという大規模な「コードカッティング」により、地域スポーツネットワーク(RSN)が崩壊したためだ。

 これによってRSNはケーブル事業者からの加入者1人あたりの配信料を失うことに。財政不安から9つの「小規模市場」チーム(ブレーブス、レッズ、タイガース、ロイヤルズ、エンゼルス、マーリンズ、ブルワーズ、カージナルス、レイズ)が2026年初頭にRSNとの契約を解除せざるを得なくなった。この事態を受け、MLBがローカル放送を引き継ぐ事態に追い込まれたのだ。

 ローゼンタール記者は、MLBオーナー側がMLB選手会に対抗する主張を成立させるには、30球団のうち23球団がオーナー間投票でサラリーキャップ導入に賛成する必要があると指摘し、議論を締めくくった。

 年俸総額2億ドル(約309億2400万円)を大幅に超えるドジャース、メッツ、ヤンキース、アストロズ、フィリーズ、ブレーブス、ブルージェイズといった球団が優勝と競争力強化に多大な努力を注いでいる中、次期CBAにおいてオーナー陣がどのように結束するかが注目される。

(笹田大介 / Daisuke Sasada)

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