2017年WBCで侍ジャパンのスコアラーを務めた志田宗大氏が想定するシナリオ
侍ジャパンの1次ラウンド最大の難敵は、思わぬところに潜んでいるかもしれない。第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド、プールCが5日に開幕。野球日本代表「侍ジャパン」は6日に東京ドームで初戦を迎える。2017年のWBCなどで侍ジャパンのスコアラーを務めた志田宗大氏が、侍ジャパンのポイントとなる相手や展望を占った。
「1次ラウンドは総当たりのリーグ戦なので、他国は『戦力的に日本には太刀打ちできない』ということで、2位狙いで準々決勝に行きたいという思惑があると思います。そうなるとエースをぶつけてくるのか、こないのか。恐らく韓国は日本戦は捨ててくるんじゃないでしょうか。チャイニーズ・タイペイに勝ちにいこうという戦い方になると思います」
現役時代にヤクルトで活躍した志田氏は引退後、ヤクルト、巨人でスコアラーを歴任。昨年は中日でゲーム戦略アナリスト兼コーディネーターを務め、現在はスポーツのデータ分析などを行うライブリッツ株式会社に在籍している。連覇を狙う侍ジャパンは、大谷翔平投手らメジャーリーガー8選手を含めた強力なメンバー。1次ラウンドのプールCでは戦力的に頭一つ抜けた存在と評価している。
他国はもちろん“金星”を狙って侍ジャパンに挑んでくるだろう。ただ、準々決勝進出を狙った現実的な戦略も必要。侍ジャパン戦の敗戦を想定して、残り試合の全勝を目指した投手起用を検討している可能性が高い。志田氏は侍ジャパンの初戦の相手となるチャイニーズ・タイペイの投手起用にも「日本戦への本気度が見えてくる」と注目している。
順当にチャイニーズ・タイペイを退けたとしても、2戦目は宿命のライバルである韓国戦。厳しい戦いは続く。侍ジャパンにとって最も相性が悪そうな相手はどの国になりそうかとの問いかけには「意外とオーストラリアかなと思っている」と8日に対戦する相手を挙げた。
「お互い3戦目になる。3戦目は、敗退するか生き残るかの戦いになることが多く、キーポイントだと思っています。恐らくオーストラリアからすると、負けたら終わりの一戦。オーストラリアは全てをここに懸けてくると思います。投手は総動員でくるでしょう。そうなった時には、どう転ぶか分からない部分が出てきます」
日本打線は大谷選手のほか吉田正尚外野手、村上宗隆内野手、近藤健介外野手ら左打者が多く並ぶ。「オーストラリアは左投手を多くぶつけてくるでしょう。ピンチで右の変則投手を起用する継投をしながら、左投手をどんどんつぎ込んでくるはずです」。エース格のジャック・オラフリン投手ら、左腕の攻略がポイントの1つとなる。
打線にも注意が必要だ。MLBでプレーするカーティス・ミード内野手やトラビス・バザーナ内野手ら一発の可能性を秘めた選手が並ぶ。「パワーがある打者が結構います。あまり広くない東京ドームですし、一発で流れが変わるケースも出てきます。長打のリスクを回避していかないといけません」。
長打を避けるには細かい制球力が必要になる。「しっかり相手の穴を突いていける投手を起用しないといけません」。2017年のWBCや巨人スコアラー時代に近くで接してきた菅野智之投手は候補の1人で「恐らく菅野投手が投げるでしょうけど、適任だと思います。彼は大胆かつ細心の投球ができる。データや弱点も把握して臨むので、リスクはかなり下がっている状態で投げるでしょう」と期待を寄せた。
「とはいえ、歴史を紐解いてみても嫌な相手です」。志田氏が警戒するのは、オーストラリアに苦戦してきた過去にも一因がある。2004年アテネ五輪では準決勝で対戦して、クリス・オクスプリング投手(元阪神)に6回2/3を無失点に抑えられるなど0-1で敗戦。「オクスプリング投手はそれまでカットボールを投げていなかったのに、急に日本戦で投げてきた。それで打てませんでした」と振り返った。
2017年WBC第1ラウンドでの対戦では2回に先制を許して4回まで無得点。5回に追いついたものの、直後に1死満塁の大ピンチを招いた。そこをしのいで、7回に勝ち越し。4-1で勝利したものの「安全な試合じゃなかった」と回顧する。韓国戦やチャイニーズ・タイペイ戦に目がいきがちだが、オーストラリア戦は要注意の一戦となりそうだ。
「日本の戦力の方が上でしょうけど、5回までが1つのポイントかなと思います」。当然、入念な対策が必要となる。鍵は左腕の攻略と、長打を封じること。実際にオーストラリアは2023年の前回大会で韓国を撃破して史上初めて準々決勝に進出している。侮れない相手であるのは間違いない。
⚪志田宗大(しだ・むねひろ)
ヤクルトの外野手として9年間活躍した後、2011年からヤクルトで、2018年からは巨人でスコアラーを歴任。2017年のWBCでは、侍ジャパン(日本代表)のスコアラーとして選手たちの活躍をデータ面から支えた「分析のスペシャリスト」。2026年にライブリッツ株式会社に入社。過去の経験を活かし、データを元に野球指導を行う「FastBall」を担当。