浮き足だった侍ナインを見て…大谷翔平が取った行動の意味 愛読書に記された言葉を体現するリーダー像

一塁ベンチへ“落ち着け”ジェスチャーを送る大谷翔平【写真:ロイター】一塁ベンチへ“落ち着け”ジェスチャーを送る大谷翔平【写真:ロイター】

大谷は同点ソロを含む2安打4出塁、リーダーとしてもチームを牽引した

 野球日本代表「侍ジャパン」の大谷翔平投手は7日、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド・プールCの韓国戦(東京ドーム)に「1番・指名打者」で先発出場し、3回に2試合連発となる2号ソロを放った。2打数2安打1打点、2四球。全4打席出塁と1番打者として満点の仕事をしただけでなく、この日はチームリーダーとして引っ張る姿が印象的だった。

 落ち着け、落ち着け――。右翼スタンドへの着弾を見届けると、大谷は一塁ベンチへ振り向いて強いジェスチャーを送った。1点を追う3回1死、同点2号ソロ。ダイヤモンド一周で、“お茶点てポーズ”はやらなかった。まず同僚へ地に足をつけて戦うことを伝えたかった。

「本当に素晴らしいゲームで、どっちが勝ってもおかしくないような、そういうゲームだったと思います。みんな先制されて『やばい、やばい』と急ぎがちなリズムになっていた。ベンチ内で感じたので。同点になって、『ちょっと落ち着いていこうか』という。ベンチの雰囲気作りですね」

 投手陣のリーダー格・菊池雄星が「よーいドン」で3失点した。まさかの劣勢。1番・大谷は、試合を落ち着かせようとしているように見えた。

 初回先頭の打席前にはバットを地面に置いて軸足の左足とホームベースまでの距離を測ると、次に本塁付近に転がっていた小石を2つ拾う。習慣化するゴミ拾いの時間をバットを構える前に入れ、自分の“間”を作ろうとしていた。

初回3失点も…チーム最年長・菅野が証言「あのままでは負けないだろうな」

 この打席で3ボール1ストライクから四球を選ぶと、1死二塁から鈴木誠也が1点差に迫る右中間1号2ラン。「(この試合で)一番大きかったのは、やはり誠也の2ラン。試合の落ち着きという意味では、あれが流れを引き寄せる。1点差にできたのは大きかった。自分自身も他のメンバーも集中できる環境になった」と同級生の一振りに感謝。そして、3回の自らの同点ソロ、鈴木、吉田との1イニング3発共演につなげた。

本塁打の鈴木誠也を笑顔で迎える大谷翔平【写真:荒川祐史】本塁打の鈴木誠也を笑顔で迎える大谷翔平【写真:荒川祐史】

 今回の日本代表メンバーは平均28.6歳。前回大会の決勝前に「憧れるのを辞めましょう」と伝説的なスピーチを行った31歳の大谷にはチームを引っ張る役割も期待される。

「短期決戦は特にそうですが、タフなゲームは必ず何試合かある。そういうゲームをものにしていくことでチームとしての結束力やチーム力が上がる。今日勝てたことは本当に大きいですし、一人一人が素晴らしいプレーをしていたと思う」。こんな発言は、もはやキャプテンそのものだ。

 大谷の愛読書に、稲盛和夫氏の「生き方」がある。京セラとKDDIを創業し、経営破綻した日本航空を短期間で再建したカリスマ経営者。稲盛氏の「集団、それはリーダーを映す鏡」という言葉は、今の侍ジャパンと大谷を示しているように見える。8日のオーストラリア戦で先発するチーム最年長36歳の菅野智之は、4本塁打を含む7安打8得点で勝利した試合後、チームの雰囲気について、こう語った。

「(初回3点を許しても)あのままでは負けないだろうなと。なんの根拠もないんですけど、それだけ打線の力はすごいものがありますし。ベンチにいても全然重苦しい雰囲気にならないというか。悲観的な選手は一人もいないので。みんな前向きに。よく声も出ていますし、すごくチームの雰囲気はいいなと思います」

 大谷が作り出す空気は、WBC連覇を目指す侍ジャパンを確実に前進させている。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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