「WBCは日本しか本気じゃない」は“嘘” 歓喜の涙、敗戦に失意…選手たちのリアル

5日にWBC開幕…日本代表は早くも準々決勝進出を決めた
5日に開幕したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は早くも大会4日目を迎えた。大谷翔平投手(ドジャース)を擁する野球日本代表「侍ジャパン」は2連勝を飾り、8日の韓国-チャイニーズ・タイペイ戦の結果により準々決勝進出を決めた。一方で「WBCは日本だけしか本気じゃない」といった冷ややかな言説が散見される。では果たして、本当にそうなのだろか。
確かに歴史を振り返れば、2006年の創設当初は温度差があった。米国では「調整の場」と揶揄され、日本だけが異様なまでの合宿期間を設けていた時期もある。だが、20年の歳月は大会を「真の世界一決定戦」へと変貌させた。その証拠は、日本戦以外のスタンドにある。
5日の平日12時開始のチャイニーズ・タイペイ-オーストラリア戦では4万人以上の入場者を数えた。6日12時開始のチェコ-オーストラリア戦も2万人以上。「日本戦以外はガラガラ」だった時代は、もう過去の話だ。ファンは知っているのだ。そこに、国を背負った男たちの「本気のぶつかり合い」があることを。
8日の韓国-チャイニーズ・タイペイ戦は、まさにその象徴だった。延長10回の激闘。WBCの舞台で初めて宿敵・韓国を破ったチャイニーズ・タイペイの選手たちは、人目をはばからず涙を流した。対照的に、敗れた韓国ナインは呆然と立ち尽くし、失意の底で目を潤ませた。これが“本気じゃない”選手の顔だろうか。
メジャー経験もある29歳のスチュアート・フェアチャイルドは熱を帯びた声でこう語った。「大観衆の前でプレーする経験はあっても、WBCの情熱はメジャーとは別物だ。短期決戦の1球1球に込められる感情の重さが違う。国を背負う誇りが、自分たちを突き動かしている」。勝ち越しのホームを踏み、ベンチで感極まったチェン・ジェシェン主将も「ファンの声援が背中を押してくれた。勝つことができて、自然と涙が出た」と声を震わせた。
熱狂は東京だけではない。地球の裏側でも、魂を揺さぶるシーンが連続している。ドミニカ共和国の至宝、ジュニア・カミネロが放った勝ち越し2ラン。ダイヤモンドを一周しながら雄叫びを上げ、バットを放り投げて感情を爆発させる姿に、誰が「本気じゃない」と断じられるのか。また、サヨナラ弾を浴びてマウンドに泣き崩れ、しばらく動けなかったニカラグアのアンヘル・オバンドの姿は、この大会が彼らにとっての「すべて」であることを物語っていた。
1球、一打、1プレー。そのすべてに人生と国の誇りを懸ける選手たちがいる。「日本だけ」という色眼鏡を外し、今この瞬間、グラウンドで流されている汗と涙を直視してほしい。WBCの熱量は、もう誰にも止められない本物だ。
(新井裕貴 / Yuki Arai)