最強の米国を完成させる2人の存在 目を閉じない“努力”とクロスプレーでの“神業”にあふれる感性【マイ・メジャー・ノート】

  • 木崎英夫
    木崎英夫 2026.03.09
  • MLB
メジャー屈指の捕手ウィル・スミス(左)とカル・ローリ【写真:アフロ】メジャー屈指の捕手ウィル・スミス(左)とカル・ローリ【写真:アフロ】

「野手と中継ぎ陣の活性化を図る」イギリス戦はスタメン入れ替え

 昨季のサイ・ヤング賞左腕タリク・スクーバルのワールド・ベースボール・クラシック(WBC)初登板が注目された7日(日本時間8日)、アメリカ代表のマーク・デローサ監督は、メンバー全員が一丸となり勝ち進むために「野手と中継ぎ陣の活性化を図る」とイギリスとの試合前に明言。これが奏功し8-1で勝利。アメリカ代表は2勝目を挙げた。

 前日6日(同7日)の初戦でベンチを温めた、ピート・クロウ・アームストロング(中堅)、アーニー・クレメント(二塁)、ガナー・ヘンダーソン(遊撃)、ウィル・スミス(捕手)をスタメンで起用。またカイル・シュワーバーを4番から1番に座らせるなど打線も組み替えて臨んだ。

 4回までわずか2安打に抑え込まれていたが、中盤5回に1死二、三塁のチャンスを作ると、暴投で同点。この直後にシュワーバーが勝ち越しの2ランを右翼スタンドに運び、一挙5得点。勢いづいた打線は6回にも、アーロン・ジャッジの痛烈な適時打などで3点を追加した。

 スクーバルは先頭打者本塁打を浴びたが、その後をきっちりと抑え3回を無四球5奪三振と期待にたがわぬ好投。デローサ監督はその後を4人でつないだ。

先頭打者本塁打を浴びるも期待にたがわぬ好投を見せたタリク・スクーバル【写真:ロイター】先頭打者本塁打を浴びるも期待にたがわぬ好投を見せたタリク・スクーバル【写真:ロイター】

ローリー「自分の感覚を大事に」、スミス「落ち着いて自分らしく」

 ジャッジ(MVP3度)、ブライス・ハーパー(MVP2度)、捕手初の60本塁打を放ったカル・ローリー、大谷翔平に競り勝って昨季ナ・リーグの本塁打王を獲得したシュワーバーがそろう豪華打線が他を圧倒する。しかし、大会史上最強の陣容は、メジャー屈指の捕手ローリーとスミスをそろえたことで“最強”になった。ローリーは昨季、捕手としてのシーズン最多本塁打(48本)を大きく更新する60発を放ち、ア・リーグ本塁打王と打点王の2冠を獲得しているが、1000イニング以上捕逸がない。スミスはリーグトップクラスの盗塁阻止率を誇る強肩である。この日も二塁盗塁を阻止している。

 数字だけではない。2人ともに捕手としての感性にあふれている。

 打者が打った際に画面に映るリプレー映像で、マスクをかぶるローリーが目を閉じない“努力”をしている瞬間をよく目にする。高い技術力を持つメジャーの捕手でも、バットがボールに当たる瞬間はほとんど目を閉じてしまうが、ローリーはそれが非常に少ない。ホームベース前に転がるボールに対して1歩目のスタートを速く切り、素手でつかんで打者走者をアウトにするプレーは閉じない目と大いに関係している。

 一方、スミスは、昨年のワールドシリーズ第7戦で神業を見せている。三塁に走者を置いた9回裏同点の場面で、ゴロを処理した二塁手からの送球が右へ逸れかけたが、スミスは一瞬、浮いた右足をベースに戻し間一髪でアウトにしている。緊迫したクロスプレーで、バランスを崩しながらも踏み位置を外さなかったのは、五角形のホームベースを自分の感覚の中に落とし込めているからであろう。スミスは「足が離れた感覚はなかった」と述懐している。

「データ重視のリードより自分の感覚を大事にしたい」とローリーが言えば、スミスは「落ち着いて自分らしくいること。投手は捕手の不安を読み取ります」と言う。この2人なくしてドリームチームは完成を見ない。

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【マイ・メジャー・ノート】
 1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続ける在米スポーツジャーナリスト・木崎英夫記者による深堀りコラム。現場での取材からはもちろん、豊富な取材メモから送るエピソードも。コアなMLBファンのための記事を原則週1本配信。

○著者プロフィール
木崎英夫(きざき・ひでお)
1983年早大卒。1995年の野茂英雄の大リーグデビューから取材を続けるベースボールジャーナリスト。日刊スポーツや通信社の通信員を務め、2019年からFull-Countの現地記者として活動中。日本では電波媒体で11年間活動。その実績を生かし、2004年には年間最多安打記録を更新したイチローの偉業達成の瞬間を現地・シアトルからニッポン放送でライブ実況を果たす。元メジャーリーガーの大塚晶則氏の半生を描いた『約束のマウンド』(双葉社)では企画・構成を担当。東海大相模高野球部OB。

(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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