新井宏昌氏、前日までと違った侍ジャパンの雰囲気を指摘
明らかに前日までとは雰囲気が違っていた。野球日本代表「侍ジャパン」は8日、東京ドームで行われた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の1次ラウンド、オーストラリア戦に4-3で逆転勝利。3連勝で1次ラウンドのプールCの1位突破を決めた。
ただ、前日まで好調だった打線が中盤まで沈黙。6回に失策で先制を許すなど重苦しいムードが漂った。現役時代にNPB通算2038安打を放ち、現在MLB中継の解説などで活躍中の野球評論家・新井宏昌氏は「今までのオーストラリア戦のように『これが決戦だ』という雰囲気になっていなかった気がします」と指摘する。
最初に違和感を覚えたのは初回だった。
先頭の大谷翔平投手は初球の148キロ外角直球を悠然と見逃した。2球目のカーブ、3球目の直球は外れてカウント2-1。バッティングカウントで投じられた4球目の真ん中低めの直球も見逃して2-2と追い込まれた。最後はスプリットを引っかけて二ゴロ。新井氏は「『あれっ?』と思いました」と振り返る。
13-0で大勝した6日のチャイニーズ・タイペイ戦では初回に初球を二塁打したように、大谷は超積極的な打撃が持ち味の1つ。先頭打者でもストライクならどんどん振りにいきながらタイミングを合わせる打撃スタイルだ。
「大谷選手が、第1打席で真っすぐを2球見逃している。そこからきょうは何か雰囲気が違うなというふうに感じましたね」
変化を感じたのは大谷だけではない。「鈴木誠也選手にしてもそうですし、ほとんどの選手が真っすぐを見逃したり、詰まらされたりしていました。『何かきょうは選手の感じが違うな』という雰囲気が続きました」。大谷は2回2死一、二塁の好機では直球にやや差し込まれて中飛に倒れた。
前日に韓国と激闘、オーストラリア戦の前には1次ラウンド突破が決まる
6回までゼロ行進が続き大苦戦。その要因を新井氏は3つ挙げた。「まずは天覧試合ということです」。1959年の天覧試合で、長嶋茂雄がサヨナラ本塁打を含む2本塁打を放ったのは有名な話だ。
「昨年、亡くなられた長嶋茂雄さんが、天覧試合でホームランを打ったことは、いろんなニュースでも流れていたので、野球関係者は皆さん知っていると思います。それで今までとちょっと違う雰囲気になったのかもしれません」。ミスタープロ野球の存在と、天覧試合が絡み合って硬さが生じたとの指摘である。
2つ目は7日の韓国戦での勝利。「前日に韓国との激闘に勝ったことで、気持ちに余裕が出たんじゃないでしょうか」。3つ目は韓国がチャイニーズ・タイペイに敗れ、オーストラリア戦前に決勝トーナメント進出が決まっていたこと。「試合前に(準々決勝が行われる)フロリダに行けることが決まった安心感があったと思います」と推測した。
「これまで厳しい戦いで結果を出してきているにもかかわらず、オーストラリアの投手に中盤までずっとタイミングが合わなかった。これだけ四球をもらっているのにもかかわらず、なかなか決定打が出ないしホームランも出ない。天覧試合の緊張感と、韓国を破り、試合前に1次ラウンド通過が決まった安心感で、これまでの『1試合1試合勝っていかないといけない』という気持ちとは違っていたのだと思います」
それでも底力を発揮して、7回に吉田が逆転2ラン。8回には盗塁や進塁打も絡めたスモールベースボールで追加点を奪った。「ジャパンらしい攻撃も出て、米国では大技小技で戦っていけます」。思わぬ大苦戦を乗り越えて、2度目の連覇にまた一歩前進。この試合の経験が米国での決勝トーナメントに生きてくるかもしれない。