侍Jが陥った一発勝負の“罠” 専門家が見た狂い…大谷&誠也は欠場して「良かった」

侍ジャパン・森下翔太【写真:Getty Images】
侍ジャパン・森下翔太【写真:Getty Images】

先発サトリアに4回2/3、無失点と抑え込まれ7回まで無得点

■日本 9ー0 チェコ(10日・東京ドーム)

 野球日本代表「侍ジャパン」は10日、東京ドームで行われた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)1次ラウンドC組のチェコ戦に9-0で勝ち、試合前の時点で決めていたC組1位通過を4戦全勝で飾った。チェコは4戦全敗に終わった。最終的には大差がついた試合だったが、大谷翔平投手(ドジャース)と鈴木誠也外野手(カブス)がスタメンを外れ休養を取った侍ジャパンは、7回までは両チーム無得点の大苦戦。なぜこれほど打てなかったのか、準々決勝以降を勝ち抜き大会連覇にこぎつけられるのか──。

 侍ジャパン打線は、チェコ先発の右腕オンジェイ・サトリア投手に翻弄。4回2/3、無失点と抑え込まれた。

 現役時代にNPB通算2038安打を放ち、引退後も名コーチとして鳴らした野球評論家・新井宏昌氏は「サトリアのチェンジアップに、全くタイミングが合いませんでした。サトリアが投げた瞬間、『チェンジアップだ』と気づいた打者もいたと思いますが、それでもバットを振るのが早過ぎてしまう。それくらい見極めづらい球でした」と分析する。

 サトリアはこの日、ストレートの最速は129キロに過ぎなかったが、110キロ台のチェンジアップ、カーブとのコンビネーションで幻惑。特に左打者の外角へ逃げていくチェンジアップの切れ味が抜群で、67球中約6割の40球を占めた。3年前の前回WBC1次ラウンド・日本戦にも先発し、この時は3回3失点だったが、大谷からチェンジアップで空振り三振を奪い、「大谷を三振させた男」として日本で一躍注目を浴びた経緯がある。

 驚くべきは4回だ。吉田正尚外野手(レッドソックス)が放った打球はボテボテの当たりだったが、不規則な回転がかかったゴロがいったんファウルゾーンに出た後、転がりながら三塁線を越えフェアゾーンに戻ってきて、内野安打となった。軟式球ならともかく、硬式球のプロの試合ではめったにお目にかかれない打球だった。

吉田正尚が放った“ありえない打球”「ボールの革が裂けていた」

 新井氏は「吉田は思い切り引きつけたつもりだったでしょうが、それでもスイングが早すぎてバットの先端に当たりました。東京ドームの人工芝が張り替えられたばかりだったことも関係していたかもしれませんが、なかなかない打球です。中継の映像で見たら、ボールの革が裂けていましたね」と解説する。

 仮に大谷、鈴木がスタメンにいたとしても、サトリアをとらえるのは難しかったと新井氏は見る。「一発勝負で初めて対戦する打者にとっては、タイミングを合わせるのが難しい。むしろ、準々決勝以降にこういう投手と対戦することはないでしょうから、サトリアと対戦せずに済んだ選手は、打撃を狂わされなくてよかったのではないでしょうか」と苦笑する。

 とはいえ、もしサトリアがNPB入りした場合、シーズンを通して活躍できるかといえば、新井氏は「リーグ戦で何度か対戦し、打者の目が慣れれば厳しくなるでしょう。今回は一発勝負だからこその快投で、こういう投球を続けるには球が遅すぎると思います」と首を横に振った。日本のファンに強烈な印象を残したサトリアは、29歳にして今大会限りでの代表からの引退を表明している。

 侍ジャパンはサトリア降板後も、2番手の右腕ミハル・コバラ投手を打ちあぐんでいたが、8回、先頭の佐藤輝明内野手(阪神)が死球を受けたのをきっかけに、若月健矢捕手(オリックス)の先制二塁打、周東佑京外野手(ソフトバンク)の3ラン、村上宗隆内野手(ホワイトソックス)と畳みかけ、一挙9点を奪い試合を決めた。

「チェコは2番手のコバラも速球とカットボール、チェンジアップを武器に好投していました。振り返ってみれば、チェコの投手は7回まで無四死球。これが善戦の要因だったと思います」と新井氏。8回には我慢しきれずに1イニングで4四死球を与え、崩壊につながったのだった。

 1発勝負の怖さも垣間見た侍ジャパン。準々決勝以降ではいよいよ、MLBのオールスター級が顔をそろえるドミニカ共和国、ベネズエラ、米国などとの対戦が予想される。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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