初代王者となった第1回WBCで投手コーチを務めた武田一浩氏の見方
敗戦の予兆は、マイアミの地を踏む1か月以上前に遡る。メジャーとNPBから磐石の布陣を整えた侍ジャパンの投手陣。その強固なはずの防波堤に、音を立てて亀裂が入った瞬間があった。ベネズエラ戦で浴びたアーチの数々は、果たして偶然か。最後まで「ブルペンの空白」は解消されなかった。
14日(日本時間15日)、フロリダ州マイアミのローンデポ・パークで行われた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準々決勝。日本にとってWBC史上ワーストとなる8失点の投壊で、大会連覇を逃すどころか、初めてベスト4にも入れなかった。
先発の山本由伸投手が4回2失点と粘りの投球を披露。3点リードした状況で5回から継投に入った。だが、2番手でマウンドに上がった隅田知一郎投手がガルシアに2ランを被弾。6回には4番手の伊藤大海投手がアブレイユに逆転3ランを浴びた。8回には種市篤暉投手の守備の乱れもあって1失点。反撃の気配はどんどん遠のいていった。
現役時代にNPB通算89勝をマークした右腕で、NHKのMLB中継などで解説を務めている野球評論家・武田一浩氏は「ああいう展開になると、南米のチームはかさにかかって一気に攻めてくる」と分析。敗因のひとつに「日本はリリーバーが離脱したのが大きかったです」と選出されていた救援投手が相次いで出場を辞退したことを挙げる。
平良、石井、松井→隅田、藤平、金丸…離脱で減ったリリーバー
日、阪神の紅白戦に登板していた石井大智投手が左アキレス腱を負傷して離脱した。さらに同26日には松井裕樹投手がコンディション不良で出場を辞退。相次ぐアクシデントで投手陣の再編を余儀なくされていた。
代わって招集されたのが隅田、金丸夢斗、藤平尚真の3投手。隅田と金丸は所属チームでは先発で、救援投手の駒不足は明らかな状況だった。
ベネズエラ戦で登板した侍ジャパンの6投手のうち、救援専門は3番手で1/3回無失点の藤平1人。大勢投手はオーストラリア戦で2被弾、松本裕樹投手は韓国戦で1失点と不安定な状態だったこともあり、9回のマウンドには菊池雄星投手が上がった。
武田氏は「リリーフ専門の人がいるのといないのでは、だいぶ違います。そこが追い風にはならなかった」とみる。侍ジャパンで投手コーチを務め、初代王者となった2006年の第1回WBCを振り返り「6回以降の投手起用は、所属チームで先発している投手じゃなくリリーバーでいこうということで選びました」と説明した。
当時は大塚晶文投手、薮田安彦投手、藤川球児投手ら救援陣が充実。「第2先発までは先発要員でいくけど、その後は普段先発している投手ではなくて、リリーフ投手に頑張ってもらう。そうしないと難しい部分が出てくるんです」。韓国との準決勝、キューバとの決勝は、いずれも最後は大塚が締めくくった。
勝てない相手ではないベネズエラに「あっさりやられちゃった」
今大会の侍ジャパンは、守護神候補だった平良の離脱でクローザー問題が浮上。昨年にクローザーを務めた投手が不在で「今回の日本は、誰がクローザーをやるのかずっと“?”だった。そこは、ちゃんといてくれないと厳しい。やっぱり3人離脱したのが誤算だったんでしょうね」と指摘した。
1次ラウンドのチェコ戦から中4日で迎えた一戦。気候など日本と環境が変わり、投手陣は全体的に「球がみんな滑り気味なんだろうなと思って見ていました」という。「まだ完全に馴染んでいないなというイメージです。気候が違うと当然変わってくる。時差の問題もあるし、あんまり良くない方向に出てしまったと思います」。
MLB選手が並ぶ強豪との戦いでは、わずかな狂いが命取りとなる。「正直、ベネズエラは勝てない相手ではない。うまくやれば勝てるんじゃないかなと思っていたら、あっさりやられちゃったなという感じでした」。救援専門ではない投手陣が中盤に攻略されると、打線も4回以降は3安打に封じられ、スコアボードにゼロが並んだ。
「ベネズエラの投手が思ったより良かったです。リリーフで出てきた投手はみんな予想外に良かった。それで、ああいう展開になりましたね。でも、しょうがないです。実力は結構拮抗している。そんなに毎回は勝てない。今まで日本は勝ってきてますけど、やっぱりメジャーのメンバーが各国そろってくると、簡単には勝てないという印象ですね」
侍ジャパンも過去最多のメジャーリーガー8人を擁したが、救援専門の3投手の離脱が痛かったのは間違いない。開幕前に生じたクローザー問題を最後まで解決できないまま、初めてベスト8で大会を去ることとなった。