WBCが浮き彫りにしたNPB“大人の事情” 専門家の訴え「世界に追いつけない」

WBC準々決勝で敗れた侍ジャパン【写真:Getty Images】
WBC準々決勝で敗れた侍ジャパン【写真:Getty Images】

第1回WBCで投手コーチだった武田一浩氏が総括

 第6回ワールドベースボールクラシック(WBC)はベネズエラの初優勝で幕を閉じた。大谷翔平選手(ドジャース)らを擁した日本代表「侍ジャパン」が準々決勝で敗れた相手が栄冠を勝ち取ったが、世界の強国とはどんな差があったのか。今後に向けての課題は何か。NPB通算89勝右腕で、2006年の第1回大会で日本代表投手コーチとして優勝を経験した野球評論家の武田一浩氏が提言した。

 優勝したベネズエラをはじめ、米国も、ドミニカ共和国もメジャーリーガーでチーム編成された。これまでの大会よりも各国が投打ともにレベルアップ。そんな中で、WBCで3度の優勝を誇る日本は初めてベスト4進出を逃した。14日(日本時間15日)の準々決勝でベネズエラに5-8で敗れたが、武田氏は「頑張ったけど負けましたしね。まぁ、いろんな見解があるでしょうけど、僕はこの大会を見て、日本は本来のスタイルに戻さないと、やっぱり守り勝っていく野球をしなければ、世界ではなかなか勝てないかもしれないなと思いましたね」と感想を述べた。

 チーム全員をメジャー在籍者にするのはまだまだ難しい日本が、力対力だけで“メジャー軍団”国に立ち向かうのは簡単なことではない。それだけでなく「これから台湾も強くなってくる。今回は最初に日本に負けちゃって(第1ラウンドで敗退と)ああなったけど、韓国には勝ちましたからね。若い選手がいっぱいいて、彼らが伸びてきたら、アジアで勝つのも日本はおちおちしていられない。大変ですよ」と武田氏は危機感も口にした。

 そんな中、声高に改めて提唱するのは「世界統一球にするべき」ということだ。「ずっと前から言われていることだけど、もうそれをやらないとなかなか世界に追いつけない。ボールが違うというのは、もう全然違う。本当にだいぶ変わってくるんで。日本は考えなければいけない。(WBCでは)ボールが滑るから大変だっていう話題が出てくること自体が、世界の土俵に上がっていない。それは言い訳になる。いつもと違う、じゃなくて世界中、一緒にすればいい。南米とか他の国はみんな、それでやっているわけですからね」。

ピッチクロックも「やった方がいい、絶対日本は」

 今大会でもNPB球に比べて、WBC球は飛ぶと言われ、それによって侍投手陣はいつもの感覚を狂わされたともみられた。日本での強化試合で2種類のボールを使い分けるなどがずっと当たり前、メーカーとの兼ね合いなど“大人の事情”もあるとはいえ「今回、負けたことだし、世界に通用するためには、みたいなことがあってもいいんじゃないですか。だって、野球だけじゃないんですかね。そういうのは」と武田氏は言う。

 WBCで取り組んだメジャールールのピッチクロック、ピッチコムについても同様だ。「やった方がいい、絶対日本は。僕は絶対賛成派だから。見に来るお客さんも4時間も野球をやってほしくないわけですよ。これはお客さんのことも考えてのルールですから。賛成です」。ピッチクロックなどに慣れていれば、今後にもつながる。WBCなどの国際大会で使われ、プレーに影響するものはすべて取り入れて、次に進むべきとの考えだ。

 選手選考に関しても「リリーフピッチャーを多くした方がいいと思う。どこの国もリリーフが多かったでしょ」と指摘する。「(第1回WBCの)僕らの時は先発が8人。あとは全部リリーフ。イニングの途中では先発ピッチャーを使わないってルールを決めていた。まぁ、今回はリリーフの故障者も出たし、スペシャリストが少なかった。その不安材料が全部出てしまった。難しいところなんだけど、ベネズエラにしてもリリーフがよかったですしね」。

 ただし、そんなリリーフ人材の層の薄さも問題にはなる。クローザー候補にしても今の日本に絶対的な存在はいない。「松山(中日)とか杉山(ソフトバンク)とかはやっぱりフォアボールを出す可能性があるピッチャー。使う側としてはそこは怖いと思う。フォアボールを考えて使わなければいけないっていうのは使う側からは結構ギャンブルなんですよ。大勢(巨人)や松本(ソフトバンク)は中途半端にシュート回転なんですよね。思い切りシュート回転ならいいけど、中途半端だと力のあるバッターにはホームランがあるんでねぇ」と武田氏は説明した。

侍Jの次期監督へ持論展開…挙がった“大物”

「藤平(楽天)はよくなったけど、まだセットアップだからね。種市(ロッテ)はクローザーをやれそうだけど、ロッテでは先発だろうから。松井(パドレス)もクローザーって感じじゃないし、今回、平良(西武)が出ていれば、変化球もあるし、結構抑えるかと思っていたんですけどね。佐々木朗希(ドジャース)は、次回は先発で出てもらわないと……」。そう現状を分析した上で、次回大会までにクローザー候補が台頭してくることを願うように、こう付け加えた。

「松山とか杉山がもうちょっと良くなるんだったら、もちろん選んだ方がいいと思うし、選ばれなければいけないと思う。僕は(現役の時に)先発もリリーフもやったからわかるんですけど、やっぱり先発の人が初球からガツンと投げるのは難しいんですよ。栗林(広島)が今年先発をやるから、両方できるかもしれないけど。まぁ、3年あれば誰か出てきますよ。出てくるのを期待しています」

 注目の次期監督問題についても「イチローがやってくれたらいいんだろうけどね。でもやらないでしょうしね」と言い「井端監督が悪いわけじゃないけど、小久保監督の時もそうなんだけど、NPB監督経験者じゃなかったことが大変だったんじゃないかと思う」と監督経験者を推奨。現在、日本ハム監督の新庄剛志氏についても「僕は悪くないと思う。お祭り男が国際大会にはいいと思う。王さんだって(第1回WBC監督の時はソフトバンク監督と兼任で)現役監督だったんだからね」と話した。

 いずれにしても、このままの「侍ジャパン」では世界との差は大きくなりかねない。メジャー選手揃いのチームと対等に戦うためにも、次回WBCまでにいろんな“改革”が必要なのは間違いない。

(山口真司 / Shinji Yamaguchi)

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