山本由伸が師事する矢田修トレーナーにベッツが弟子入り
ドジャースは26日(日本時間27日)、本拠地でのダイヤモンドバックス戦で2026年シーズンの開幕を迎える。ここまでの準備段階では、チーム内で新たな光景が見られた。主力のムーキー・ベッツ内野手はアリゾナ州グレンデールのスプリングトレーニングから山本由伸投手が師事する矢田修トレーナーに弟子入り。メジャー13年目のシーズンへ準備を進めてきた。
レッドソックス時代の2018年にMVPに輝き、オールスターに8度選ばれている。7度のシルバースラッガー賞、6度のゴールドグラブ賞、4度のワールドシリーズ制覇と、輝かしいキャリアを誇る33歳は、なぜ、山本が行うトレーニングを取り入れたのか。ベッツから「先生」と呼ばれる矢田トレーナーに聞いた。
「ムーキーが山本くんに興味があったんだと思います。最初は山本くんつながりで話が来て、『1度お話しましょう』となって。そこから話が進んで、だんだんと今の形になりました」
山本は身長177.8センチ、体重79.8キロとメジャーリーガーの中では小柄な体格。それでも、100マイル(約161キロ)に迫る剛速球を投げ、昨季はチームで唯一、先発ローテーションを完走。ワールドシリーズでは中0日救援などシリーズ3勝のフル回転を見せ、MVPを獲得した。
なぜ、あの小さな体が圧倒的なパフォーマンスを可能にしているのか。身長175.3センチ、体重81.6キロと山本と同じような体格を持つベッツは、山本がメジャーで成功をつかむ、かなり前から興味を持っていたようだ。
「山本くんがメジャーに来た年、最初からお話しさせてもらっていました。そこから部分的に、断片的にやっていたのが『全部聞きたい』『全部やってみたい』ということになって。それで、今回のキャンプから本格的に始めました」
肩車トレーニングは「これはめちゃくちゃややこしいんです(笑)」
ベッツと矢田先生がキャンプ中に屋外で見せたトレーニングは主に2種類だ。1つ目は、ベッツが矢田先生を担ぐ肩車。どういった狙い、意識で行っているのか――。
「これはめちゃくちゃややこしいんです(笑)。僕が上に乗ることで、僕の体の軸をムーキーが感じ、ムーキーの体の軸も僕が感じます。コンタクトをとりながら、僕が上から軸のズレを指摘するんです。『今、体の軸は右だよ、左だよ。遅れたよ、早いよ』と。本人では分からないことも、上から言われると、ムーキーも『本当だ』と確認できるんです」
矢田先生は英語が堪能ではない。大谷翔平投手の通訳を務めるウィル・アイアトン氏らに参加してもらっている。
「僕は何も話せないので、『軸が前に行ってる』『軸が後ろにある』と言ったことを(アイアトン氏に)伝えてもらっています。でも、日に日に良くなっています。ムーキーは能力も意識も高いですね。(技術の)飲み込みも早いです。他の選手と詳しく話したことはないですが、僕がこちらに来て知っている人の中では、相当高いなと感じます」
やり投げの狙い「アメリカでは手で投げる、手で打つというのが主流ですが…」
2つ目は「ジャベリックスロー」だ。トレーニングの狙いについて、矢田先生は「アメリカでは『手で投げる、手で打つ』というのが主流ですが、そうではなく、『体全体で投げる、打つ』ということを、言葉ではなく、エクササイズを通して感じられるように提供しています」と説明する。やり投げ競技のように遠くに投げるのだが、これが簡単なようで難しい。
「手で投げると全く飛びません。ムーキーも最初は日本の学生が投げるくらいでした。でも、今は山本くんの見える(レベルが近い)ところまでは来ています。今は30メートルから、よく飛んでいる時はもう少し飛んでいるかな。『こうやったら、ああいうふうになるんだな』という感覚が出てきています」
体全体を使ってボールを投げる――。ベッツが守る遊撃は三遊間への深い打球では一塁への遠投を求められる。2月に始めたばかりだが、徐々に“コツ”をつかんできているようだ。
一風変わったトレーニングに見える“矢田塾”。山本がブレークしたことを受け、日米から弟子入り希望者が殺到したという。「見た目は簡単そうですが、要求されることはかなり厳しいです。山本くんのように突き詰められる人は稀で、続けられる人は少ない。僕は協力するだけです」。最後に、自身のトレーニングの真髄を語ってくれた。
「地球上で人間が体を動かして目的を達成しようとしたら、何をやるにしても基本は一緒ですから。目的が違うだけで、根本は同じものが形を変えて表現されているだけだと思っています。言葉で伝えられないことを、どう伝えるか。僕も工夫している最中です」
昨年までとは一味も二味も違ったベッツが期待できそうだ。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)