新企画「MLB Press Box」開始…米記者のリアルな視点と忖度なき評価
日本国内の報道とは一線を画す、現地米国メディアの「忖度なし」の視点。有力紙やスポーツ専門メディアの記者が、日本人選手やチーム状況をシビアかつ客観的に分析するFull-Count+の新企画「MLB Press Box〜米国記者の忖度なき評価〜」。第1回は、“辛口コラムニスト”で知られるディラン・ヘルナンデス記者(カリフォルニア・ポスト)がドジャース・佐々木朗希投手の現在地を綴る。(以下、敬称略)
著者:ディラン・ヘルナンデス
Dylan Hernandez
カリフォルニア・ポスト所属
エルサルバドル出身の父、新潟出身の日本人の母を持ち、日本語も堪能。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)を卒業。「サンノゼ・マーキュリー」紙を経て、2025年まで「ロサンゼルス・タイムズ」紙に所属し、コラムニストを務めた。2026年から「カリフォルニア・ポスト」に所属。
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2年目を迎えた佐々木朗希の開幕ローテーション入りが決まった。だが、オープン戦の登板を見ていれば、当然不安だ。中でも最後の登板は、酷かったと言わざるを得ない。初回は1つのアウトもとれず4四死球で交代。試合後の取材対応で見た彼の姿は、どこか自信を失ってしまったようにも見えた。
本来であれば、マイナーでの調整が妥当だろう。一方で、オープン戦で散々な内容だった佐々木を開幕メジャーに入れたことに、球団の責任感を感じた。
大谷翔平を除けば、日本から来た選手で全球団が欲しがったのは佐々木くらいだ。過去のスター選手たちと違い、莫大なポスティング費用もかからない。その中で、ドジャースを選んでくれた彼に対して、球団は「誠意」を見せる必要がある。そして、ここで彼をどう扱うかが、今後やってくる日本人スター選手たちのドジャースへの印象を左右することにもなりかねない。
2017年、大谷翔平の母校である花巻東高校を訪れた際、佐々木洋監督にこう言ったことがある。「アメリカ人は信用してはいけない。嘘の基準が日本とは違うんです」と。アメリカでは、真逆の嘘さえつかなければ、都合の悪い事実を隠して相手に勘違いさせても「勝手に勘違いした方が悪い」という傾向がある。
かつて前田健太がドジャースと結んだ契約がまさにそうだった。年俸が低く、ほとんどがインセンティブ(出来高)だったため、球団は彼をローテーションから外したり、ブルペンに回したりと、かなり荒い扱いをした。ドジャースは本来、そういうシビアな球団なのだ。
だが、今回の佐々木に対しては少し違う。
佐々木がドジャースを選んだ時に球団とどんな約束があったのかは分からないが、「先発ローテーションで投げる」ことは、両者の共通認識としてあったのではないか。他球団なら1番手で投げられるような素材が、競争の激しいドジャースを選んでくれたのだから、球団もそれは理解している。
そして、先発に再挑戦する2年目。どれだけストライクが入らなくても、ドジャースは彼をローテーションに入れた。「なんでこんな状態のやつを使うんだ」という批判があるのは当然だが、ドジャースは「偉い」とも思う。彼らなりに、佐々木への誠意を示しているのだから。
マイナー降格の受け入れと、今後の課題
とはいえ、佐々木の状態は深刻だ。前回(日本時間18日)の登板を終えた佐々木は、オープン戦最終戦に向けて「結果にも集中してやっていきたい」と答えていた。しかし、この結果に終わったわけだ。
初回にマウンドを降りた時、日本に詳しい他球団のスカウトからは「フジナミみたいだった」とメッセージが送られてきた。登板後、私は佐々木に「マイナーで調整した方がいいと思うか?」と聞いた。この時、彼は多少なりとも抵抗するかと思っていたのだが、「(球団が)そういう判断になれば、その方がいいと思います」と、チームの指示に素直に従う意向を口にしたのだ。
今の状態でシーズンに臨めば、佐々木は恥をかくかもしれない。彼がマイナー調整について拒否反応を示さなかった時、そう感じた。アスリートはいかなる状況でも前を向く選手がほとんどだ。しかし、前回の登板でああいう結果になってしまい、さすがに本人も「ちょっとこれでは難しい」と思ったのかもしれない。
ドジャースは当初、「慣れの問題はあるだろうが、佐々木ならそこまで手はかからずに、順調に活躍してくれる」と思っていたはず。だが、もうそういう状況ではなくなってしまったように見える。
私はまだ「本当の佐々木朗希」をこの目で見ていない。160キロを超える直球を投げ込み続け、鋭いスプリットで打者を圧倒する―――。ロッテ時代はもう少しコントロールも良かったと記憶しているが、ドジャースでは別人だ。オープン戦最終戦後には「ブルペンでは制球できていたんですけど、試合になると同じような内容が続いてしまった」と話したが、これが1週間で直るようなものとは到底思えない。
今シーズン、彼はどこかのタイミングでマイナーに落とされるだろう。その時、彼は一からピッチングを作り直すことが求められるのではないか。
先発だろうがリリーフだろうが、メジャーで1年間戦うにはまだ体力面には課題がある。短期決戦での抑えであればいけるかもしれないが……。5回、6回まであの球速で投げ続けられないなら、ピッチングスタイルを変えることになるかもしれない。そうなれば何か月の問題じゃなく、年単位での問題になる。
ただ、彼には間違いなく才能がある。チームも彼を諦めはしないだろう。ドジャースとしても佐々木という「日本の宝」を扱うため試行錯誤しているはずだ。それならばチームはもう少しスキルについてアドバイスできる日本人スタッフを増やしてもいいのではないかとも感じる。
佐々木は明らかにフロント側とうまくコミュニケーションを取れていない。アメリカ人の組織だから外国人を加えにくいのは理解できるが、チーム経営はいまや大谷翔平中心で回っている。そういう意味でも、技術に精通した日本人スタッフの必要性も指摘しておきたい。
(ディラン・ヘルナンデス / Dylan Hernandez)