自身3球団目で“最後の挑戦”…楽天・伊藤光が得た財産 去るDeNAで大粒の涙を流した真相

今季から楽天でプレーする伊藤光【写真:加治屋友輝】今季から楽天でプレーする伊藤光【写真:加治屋友輝】

伊藤光は8年ぶりパ・リーグで「日々勉強しながらやっている感じです」

 杜の都で、プロ19年目の挑戦が始まった。「もう一度勝負したい」と決断したFA移籍。楽天の伊藤光捕手は開幕1軍を掴み、熟練のリードでチームに新しい風を吹かせている。

 2007年高校生ドラフト3巡目でオリックスに入団。2014年にはベストナインに選出されるなど正捕手として君臨した。2018年途中にトレードでDeNAに移籍し、2019年には84試合に出場。しかし近年は出場数を減らし、昨季は1軍定着後では最少の6試合にとどまった。

 そんなとき、「一番最初に声を掛けていただいたし、熱い言葉をいただいた」という楽天で、“最後のチャレンジ”をすることを決めた。

 パ・リーグで戦うのは8シーズンぶり。「もう選手がほとんど変わっている。昨年までは交流戦で3試合という短期決戦的な感じで対戦していたので。そのときの選手のイメージはあるんですけど、これから1年間を通して、レギュラーだと100打席くらい対戦することになると思うので、どうイーグルスのピッチャー陣と対策していくか、日々勉強しながらやっている感じです」と新鮮な毎日だ。

「(3球団目で)たくさんの監督、コーチ、スタッフをさん含めてを出会わせていただいている。いろいろな人の頭を借りて、自分のものにさせてもらっている。その経験値というか、たくさんの人の知恵を借りているのは、財産としてあります。それが強みかわからないですけど、若いピッチャー陣に伝えられるんじゃないかというのはあります」

 プロ野球選手は、1軍で試合に出てこそ。「僕のチャレンジというか、一番必要としていただいたチームでできることが光栄ですし、やはり1軍でやりたいと思って来たので」。再び戦いの“最前線”に戻ってきた36歳の表情には、充実感がにじむ。

プロ19年目、開幕1軍をつかんだ【写真:加治屋友輝】プロ19年目、開幕1軍をつかんだ【写真:加治屋友輝】

去るDeNAに「自分で決断したとはいえ、このチームが好きだったんだな」

 悩みに悩んで決断したFA移籍だった。昨年11月、伊藤光は別れの挨拶のため、神奈川・横須賀市内にあるDeNAの球団施設を訪れていた。グラウンドで選手らと握手を交わしたときは笑顔だったが、室内で裏方さんたちを前にお礼の言葉を述べた際には大粒の涙を流していたのだという。

 このことについて、最初は「泣いてないですよ」と照れ笑いしたが、“真相”を明かしてくれた。

「選手はこれから対戦することもあるだろうし、寂しさもなくて、仲間というか友達みたいに思っています。ただスタッフさんにはすごくサポートしてもらったなと思い出したりして、そこで予定にない、こみ上げるものがあったんです。自分でもびっくりしたんですけど、それだけ感謝していたんだなと改めて思いました。みんなの顔を見ながら喋っていたら……。自分で決断したとはいえ、本当にこのチームが好きだったんだなって。愛着もありましたしね」

 さらにDeNAで過ごした7年半は、マインドの変化ももたらしていた。

「キャッチャーって苦しいポジションじゃないですか、いろいろ言われて。でもベイスターズのチームカラーというか、しっかりやることをやって、純粋に野球を楽しんでいいんだというのをみんなに教えてもらった気がしたんです。表面だけ見ると陽気な軍団みたいに見えますけど、みんな個人でやることをやっていて、自主性にすごく取り組んでいるチームだと入って思ったので。それが僕の中ではすごくプラスだったんですよね。学ぶことが多かったです」

ベテランとしてチームを引っ張っている【写真:加治屋友輝】ベテランとしてチームを引っ張っている【写真:加治屋友輝】

「キャッチャーって、報われるのは本当に優勝したときくらい」

 楽天ではいきなり野手最年長となったが、その経験値がチームにもたらすものは大きい。井野卓バッテリーコーチも「自分が(マスクを)被っているときの感覚も、若い選手が被っているときに外から見ている感覚もあって、そこで意見交換ができる。投手にかける言葉もすごくいい影響があるし、チームに活きる。存在は大きいと思います」と感謝した。

 とはいえ、まだシーズンは始まったばかりだ。伊藤光は強調する。

「キャッチャーって、報われるのは本当に優勝したときくらいしかないんですよ。僕はリーグ優勝の経験はないんですけど、日々苦しい、考えている時間の方が長い。でも最後に報われるポジションだと思っているので、シーズンに関しても、そうなればいいなと思ってやってます。自分の役割もわかっているつもりですが、全試合準備するというのは変わらないですし、今までやってきたことを全て出す。それがうまくいくかいかないかはわからないですけど、それを含めて貢献したいと思っています」

 楽天に2013年以来の歓喜が訪れるとき、その中心にいるべく、背番号27はチームのために地道な準備と努力を続けていく。

(町田利衣 / Rie Machida)

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