タティスJr.と伊藤園、異例コラボの裏側 物議醸すナインの行動→スターに垣間見た“日本愛”

  • MLB
  • 2026.04.20
「Call Me」から始まったフェルナンド・タティスJr.と伊藤園のコラボ【写真提供:伊藤園】
「Call Me」から始まったフェルナンド・タティスJr.と伊藤園のコラボ【写真提供:伊藤園】

ドミニカナインの物議醸す行動…一人違ったタティスJr.

 3月のWBC。ドミニカ共和国の至宝、フェルナンド・タティスJr.外野手が見せた「Call Me(電話して)」のジェスチャーから、わずか9日――。異例のスピードで世界同時配信の公式コラボへと発展させたのが、日本茶ブランド「お~いお茶」を展開する伊藤園だ。なぜ“爆速決断”は可能だったのか。そこには、ネガティブな空気を一転させた“日本愛”があった。

 当初、ドミニカ共和国代表を巡っては、会見場での振る舞いが物議を醸していた。「お~いお茶」のボトルを隠したり、味見をして不思議な顔を浮かべたりするなど、日本のファンには馴染みのない行動に、SNSでは批判の声も上がっていた。伊藤園広報部広報課の鈴木將太さんは当時の心境をこう振り返る。

「正直、簡単に言葉にできる状況ではありませんでした。一方で、結果的に『お~いお茶』が注目される局面でもあり、その点は冷静に注視していました」

 そんな中で見せたのが、タティスJr.の「Call Me」。この瞬間が転機となった。伊藤園にとっては、ブランドへの関心と好意の表れと受け取れるサインでもあった。

「最終的なGOを出したのは、弊社の副社長(本庄周介)です。それまでの経緯を踏まえた上で、ブランドとの親和性や、彼がとても好意的に接してくれていること。これらを一つのきっかけにしよう、まずは連絡を取ってみよう、というのがスタートでした」。

 タティスJr.へコンタクトしたものの、すぐに連絡が来るとは思っていなかった。そもそも、返事が来ることすら懐疑的だったという。しかし実際は、「即答」だった。「やり取りを始めてから、本当に2~3日。そこからマイアミでの撮影が16日(日本時間17日)にあって、18日には報道関係者向けに発表しました。これまでにないほどのスケジュールでした」。

ドミニカ共和国代表としてWBCを戦ったフェルナンド・タティスJr.(右)【写真:ロイター】
ドミニカ共和国代表としてWBCを戦ったフェルナンド・タティスJr.(右)【写真:ロイター】

撮影で確信したタティスJr.の“日本茶愛” 本人からの“逆オファー”も

 マイアミで行われた撮影時間は、わずか15分から30分。しかし、そこには台本を超えたドラマがあったという。

「『伊藤園、お~いお茶、美味しい』というフレーズ以外、味わいの感想はすべて台本なしのフリートークです。もともとタティス選手が日本のアニメや漫画が大好きという背景もあり、非常にリラックスした雰囲気だったと聞いています。日本語もお上手で、なんと一発OKでした」

 実は、この「日本文化への愛」こそが異例ともいえるコラボを後押しする大きな要因だった。

「やり取りをさせていただいて、タティス選手が日本のアニメや文化が好きだとお伺いしました。日本文化に本当に好意を持って接していただいているところが一番の決め手でした。お~いお茶を広めたいという思いも示していただき、ぜひということで実現に至ったんです」

 さらに鈴木さんは、撮影現場で垣間見えたタティスJr.の「家族想い」な一面も明かす。「当初はご本人への商品提供を考えていたのですが、『家族とも飲みたいから、家族の分も欲しい』と言ってくださって。今、ご希望を伺いながら準備を進めているところです」。

コラボの経緯を話す伊藤園広報部広報課の鈴木將太さん【写真:新井裕貴】
コラボの経緯を話す伊藤園広報部広報課の鈴木將太さん【写真:新井裕貴】

「難しい局面を乗り越え、日本茶の価値を前向きに伝えることができた」

 1年分相当のお茶(しかも家族の分まで!)を手に入れたタティスJr.。このコラボは、伊藤園にとっても単なるPR以上の意味を持っていた。

「(代表の振る舞いが)物議を醸したという流れの中、流れを前向きなものへと導くことができました。日本茶の代表者として、良い着地をすることができたという実感があります」と、鈴木さんは噛み締めるように頷いた。

 伊藤園といえば、ドジャース・大谷翔平投手とグローバルアンバサダー契約を結んでいる。このオファーもまた、大谷自身が「お~いお茶」のファンだったことが要因の一つだった。そして同じように、タティスJr.にお茶への“愛情”を感じたことも、判断を後押しする要素となった。

「もともとWBCをスポンサードしたのは、この機会を通じて世界の方々に日本茶を知っていただきたいという思いが根底にありました。ネガティブな空気感を払拭して、良いPRに繋げられたのが何より嬉しいです」

「お~いお茶」を片手に、家族と共にリラックスするメジャーリーガー。その裏側には、チャンスを逃さない企業の決断力と、日本文化を愛するアスリートの純粋なリスペクトがあった。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

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